早稲田大

文=丸山素行 写真=バスケット・カウント編集部

初得点が起死回生の逆転3ポイントシュート

インカレは3日目にして大きな波乱が起きた。前年度王者であり、秋のリーグ戦でも準優勝に輝いた大東大が2回戦で姿を消した。

その大東大を58-56で破ったのが早稲田大だった。一時2桁のビハインドを背負うも慌てることなく点差を縮め、1点ビハインドで迎えた残り8秒からのオフェンスで濱田健太の3ポイントシュートが決まり土壇場で逆転に成功した。

殊勲の決勝シュートを沈めたキャプテンの濱田はラストシーンをこう振り返った。「本当はガードがドライブするセットでした。僕は囮で広がって、1本もシュートを決めていなかったのでノーマークになりました」

この日、濱田のシュートタッチは良くなく、それまでに放った7本のシュートはすべてリングに弾かれていた。その状況でシュートを沈め、残り時間はわずか2秒。勝利を確信してもおかしくはなかったが、濱田は冷静だった。

「去年のリーグ戦で2点勝っている場面でひっくり返されて、延長に持ち込まれて負けた試合がありました。それが少しよぎったのもあって、『まだ落ち着け、冷静になれ』という声はかけました。でも僕が言わなくてもみんな分かっていました」と集中力は最後まで途切れなかった。

サイズで劣る早稲田だったが、豊富な運動量とボールへの執着心で前年王者を破った。「自分たちの強みだったり徹底しなきゃいけないことをやってきて、その強度だったり当たり前の基準が1段階も2段階も上がったのがこのインカレだと感じています。最後にして良い形になってきたので、これを徹底することに尽きます。それを貫くことだけに集中してやっていけば、結果はついてくるんじゃないかって僕は思います」と完成形に近づいた早稲田バスケに自信を持つ。

小室悠太郎

相手に優位を与えなかった小室の存在

ロースコアゲームの末に大東大に競り勝つ立役者を一人挙げるとするならば、2年生センターの小室悠太郎だろう。189cm99kgの小室はセンターとしては小柄だが、その身長差をフィジカルでカバーするゴツさがあり、大東大のモッチ・ラミン(202cm105kg)を見事に封じた。

モッチは1回戦の関西学院大戦で26得点19リバウンド(うち13オフェンスリバウンド)を記録したが、早稲田大戦では13得点12リバウンド(3オフェンスリバウンド)に留まった。小室のパワーと技術がセカンドチャンスポイントを与えない原動力となった。

小室はモッチについて「必ず止めたいと思っていた目標の選手」と語る。「高校の時から留学生のいるチームとの対戦はずっと留学生についていたんですけど、彼は1つ上でもありますしその中でも最強で、フィジカルも強くてフックシュートもうまくて、本当にやっかいな相手です」

それでも「点数的にもリバウンド的にも一番抑えられた試合です」と小室は胸を張った。
残り3分の場面で4つ目のファウルがコールされて危ない場面もあったが、「意図していないファウルが1個ありましたが、ある程度計算通りでした。正直、委縮しちゃう部分はありましたが、ひたすらハンズアップで身体を当てて頑張りました」と冷静に戦い続けた。

その一方で小室は、「僕ももちろん頑張りましたが、結局は僕だけじゃなく、ダブルチームだったり、プランニングの部分を全うできたことが勝ちに繋がったと思います。早稲田のディフェンスがハマったんです」と、チームディフェンスの勝利を強調した。

試合終了のブザーがなり、早稲田大の選手たちは両手を上げて感情を爆発させるのではなく、下を向いて勝利を噛み締めていた。どちらが勝ったのか錯覚を起こすような光景だったが、それだけ大東大超えが悲願だったかを物語っていた。

「リーグ戦の1週目で良い試合ができましたが、結局勝てなくて、2回目は大差で負けて、それで今回だったので、正直勝つ可能性は低いって思っていました。でもやれることをやって勝てたので、本当にうれしいです。あと最終日までみんなでバスケができるっていうのがなによりうれしいです」と小室は言う。

準々決勝の相手は、近畿大学を下した日本大に決まった。日本大には208cmのセンター、シェイク・ケイタがいる。早稲田大がその先の光景を見るためには、小室がケイタを抑られるかがカギとなりそうだ。