勝負どころで積極的なアタックから得点に成功し、逆転勝利の立役者に

4月12日、前節の宇都宮ブレックス戦を連勝して勢いに乗る茨城ロボッツと、前節まで5連敗と苦しい状況にいた群馬クレインサンダーズの今シーズン最後の対戦が開催された。お互いに高確率でフィールドゴールを成功させる展開となったが、94-90で群馬が粘り勝ちを収めた。

序盤、群馬はペイントを固める茨城に対してシュートミスが続き得点に繋げられず、逆に積極的なアタックを見せる茨城に連続得点を許してしまう。光るディフェンスを見せる場面も多かった群馬だが、ファウルも多く、このクォーターだけで11本のフリースローを茨城に与えてビハインドを背負った。

第2クォーターに入ると、平尾充庸やチェハーレス・タプスコットに3ポイントシュートを許したが、群馬はトレイ・ジョーンズを中心に全員が連動するハーフコートオフェンスで追い上げを図る。さらにディフェンス強度を上げて、茨城の不用意なターンオーバーやシュートミスを誘い逆転に成功。終盤には、ベテランの五十嵐圭がミドルシュートを決めるなど、良い繋ぎを見せて3点リードで前半を終了する。

第3クォーター、最初のディフェンスで茨城のセットオフェンスから中村功平に3ポイントシュートを許して同点に追いつかれると、残り5分にはジョーンズがファウルトラブルとなりベンチに下がらざるを得なくなる。その後、群馬はターンオーバーから多嶋朝飛に連続得点を許して流れを渡してしまい、ビハインドは2桁に。だが、ここでジョーンズをコートに戻して反撃し、6点ビハインドで最終クォーターを迎えた。

追い上げたい群馬は、第4クォーターの最初のディフェンスでボールマンに激しいダブルチームを仕掛けてターンオーバーを誘発し得点に繋げる。続けてディフェンスの強度を保ち、クォーター開始から3分強の間茨城を無得点に抑えた。好守で勢いに乗る群馬は、残り5分に野本建吾が積極的なアタックからの連続得点に成功して逆転。その後は、この試合でキャリアハイの30得点を挙げた中村を止めることができず何度もリードチェンジを繰り返すクロスゲームとなったが、決死のディフェンスを見せた群馬がハイスコアゲームを制した。

「『来て良かった』と思ってもらえるような試合をみんなでやっていきたい」

群馬はエースのジョーンズがシーズンハイに迫る34得点と活躍を見せたが、水野宏太ヘッドコーチが「チーム一丸となって40分間戦えた」と振り返るように、チーム全員で勝利をつかみ取った。敗戦が続く状況からは全員のステップアップが必要とされるが、特に目を見張る活躍を見せたのが日本人ビッグマンの野本だった。

得点源になれる選手が多い群馬のロスターの中で、野本に大きく期待される役割はディフェンスだ。水野ヘッドコーチは「チェハーレス・タプスコット選手とトーマス・ケネディ選手に持ち味を出されてしまう展開となる中で、パーカーと野本が簡単にやらせないようにディフェンスにプライドを持ってやってくれたことが勝利の大きな要因でした」と評価している。

実際、第1クォーターにはキャメロン・クラットウィグとケネディに挟まれながらもオフェンスリバウンドに飛び込み、ファウルをもらうプレーも見せた。攻守に渡り野本が身体を張って献身的に役割を全うする場面を挙げたらキリがない。

野本自身も「自分(に求められていること)はディフェンスだと思っているので、外国籍選手や帰化選手に簡単に得点させないことは継続的にやっていきます」と話すように、役割を遂行するマインドを常に持ち合わせている。

さらに、この試合においてはオフェンス面での活躍も光り、重要な最終クォーターで6得点を挙げて、シーズン平均を大きく上回った。シュートの内容も、ゴール下でパスをもらっての得点ではなく、3本ともドリブルで自らアタックする積極的なプレーで得点を挙げた。野本はこう振り返る。「今日は出場時間が長く、身体が温まっていたので、ドライブを仕掛けてスピードのミスマッチを狙っていこうと思っていました」

特に、逆転に成功した野本の得点は、勝利した瞬間に匹敵するほどベンチもブースターも盛り上がりを見せた。あの場面を「みんながどう思っているか分からないので、『なんか沸いているなぁ』と思いましたけど、盛り上がってくれるのはうれしいです」と振り返り、キャプテンとしてチームに対する思いも続けた。「自分も他の選手が活躍してくれた時には喜んだり盛り上げて、コートの選手が気持ち良くプレーできるようにしています。相乗効果で雰囲気が良くなればと思っています」

前節で群馬のチャンピオンシップ出場への道は途絶えてしまったが、野本は残りの試合に対する思いをこう語る。「前節も、遠い北海道まで来てくださったお客さんに敗戦を見せてしまったのは心苦しかったです。チャンピオンシップ出場は途絶えてしまいましたが、『来て良かった』と思ってもらえるような試合を毎試合みんなでやっていきたいです」

そして、今シーズンの群馬にとって大きなトピックとなるOPEN HOUSE AREA OTA(以下、オプアリ)がいよいよ15日に柿落としを迎える。「チームにかかわってくださっている全員が楽しみにしていると思うので、1番は勝ちにいくことです。勝つことで応援してくださるお客さんも増えてくると思うので、オプアリで勝利する姿を応援してくださっている皆さんに届けたいです」と、野本はファンへの思いを話し締め括った。

シーズン序盤は好調だったものの、惜敗が続く難しい時期を迎え、チャンピオンシップ進出は叶わなかった。それでも、全員でつかみ取ったこの勝利はオプアリで新たな歴史を作る弾みになっただろう。また、野本の力強い言葉から、チームが前進し続けていることを感じたと同時に、良い形でシーズンを終える期待感が膨らんだ。