レブロンとの『最後の勝負』で見せた衰えと健在ぶり
今シーズン限りでの引退を表明しているドゥエイン・ウェイド。2003年にドラフト5位で指名されてから3回の優勝、12回のオールスター選出、得点王、ファイナルMVPも獲得してきたウェイドの今シーズンは、ベンチからの出場し26分のプレータイムで14.9点、3.9アシストを記録し、まだまだNBAで通用する実力があることと、とはいえオールスタークラスの実力とはいかないことを示しています。
同じ年にドラフト1位で指名されたレブロン・ジェームスとの現役最後の試合では、自身の限界と、それでも名残惜しく感じてしまうプレーを披露してくれました。
得点王を獲得した頃のウェイドは、初優勝時にチームメートだったシャキール・オニールが「フラッシュ」の愛称を付けるほどのスピードと多彩なステップワークで得点を量産していました。高いフィールドゴール成功率とフリースローの多さが特徴で、高速ペネトレイトは警戒していても止められず、2006年のファイナルでは6試合で97本のフリースローを打ち、平均34.7点を記録しています。
Before they go head-to-head one last time … back in 2006, @KingJames and @DwyaneWade had a battle to remember.
LeBron: 47 pts, 12 reb, 9 ast
Wade: 44 pts, 8 reb, 9 ast pic.twitter.com/ZKwz6u0Dxd— SportsCenter (@SportsCenter) 2018年12月10日
しかし、現在のウェイドはスピードで抜ききることが難しくなり、タイミングを外してのフローターで得点するパターンはあるものの、得点王を獲得した2008-09シーズンに60%の成功率を記録していたフェイダウェイジャンプシュートの成功率は33%にまで落ちています。また、フェイクを駆使してファールを引き出すことにも苦労しています。
それでもヘッドコーチのエリック・スポールストラはウェイドを信用して、長い時間ボールを持たせています。スポールストラがヒートのヘッドコーチに就任した時はまだ38歳で、すでに優勝も経験していたウェイドとの関係性は特別なものです。同じくヒートに在籍していたレブロンとの対戦ということもあり、レイカーズ戦では32分間もウェイドをプレーさせました。
前半は1本もシュートが決まらず、ドライブも止められたウェイドですが、パスアウトを繰り返すことでアシストが増えていきます。ウェイドにボールを預ければ、得点力は落ちていても次のプレーに繋げられるというスポールストラの考えは、ウェイドにとって2シーズンぶりの10アシストという結果に繋がりました。止められたウェイドからのパスを受けたチームメートが高確率でシュートを決めることで、レイカーズのハイペースについていく前半になりました。
The @Lakers salute @DwyaneWade! #OneLastDance #ThisIsWhyWePlay pic.twitter.com/bggUlKPiJo
— NBA (@NBA) 2018年12月11日
ウェイドはスピードを生かしたスティールとジャンプ力とパワーを生かしたブロックも武器で、オールNBAディフェンシブチームに3回選出されています。しかし、高い身体能力が生み出すディフェンス力だっただけに、どうしても年齢的な衰えが出てきてしまっています。
前半にマッチアップする機会が多かったカイル・クーズマはサイズも大きく、スピードとテクニックでウェイドを翻弄し、次々に得点を奪っていきました。ロンゾ・ボールにもスピードとパワーで押し切られたシーンがあり、高い身体能力を持つ2年目の若者たちに個人技でやられてしまうのも事実です。一方でレイカーズのベンチメンバーが相手だとしっかりと守り切る場面も増えてきます。身体能力で負けない相手にはまだまだ守れる一面も発揮しました。
後半になるとゾーンも駆使してマッチアップミスをなくす工夫したヒートにより、ハイスコアだった前半から一変しペースダウンしていきます。前半無得点だったウェイドですが、次第に集中力を上げていき、一瞬の切り返しでディフェンスを置き去りにしてのフローターや、ハイアーチのレイアップを決めていきます。
ヒートのファンがウェイドを愛する最大の理由は勝負強さ。試合を決めることができるエースは健在で、今でも勝負所では頻繁にウェイドに託していきます。この特別な試合でも勝負強さを発揮し、後半に15点を記録したことで最後まで接戦が続きました。
What a finish in LA… LeBron James & Dwyane Wade embrace after the buzzer in their final matchup! #OneLastDance #ThisIsWhyWePlay pic.twitter.com/N4NEikBXof
— NBA (@NBA) 2018年12月11日
残り1分半、レイカーズ1点リードになると、ディフェンスでレブロンとのマッチアップを選択したウェイド。プライドがぶつかり合う2人の戦いは意地のディフェンスでシュートを決めさせなかったものの、ウェイドのシュートも決まらず時間だけが減っていきました。ファウルゲームに持ち込んだヒートですが、レブロンに2本のフリースローを決められ3点差になります。
同点の望みをかけたウェイドのプレーはレブロンに読み切られ、それでも何とかオフバランスで打った3ポイントシュートはボードとリングに当たったものの外れてしまい試合終了。この試合4本の3ポイントシュートを決めた盟友レブロンを前にして、7本打った3ポイントシュートすべてを外してしまったことで、2人の最後の対戦を勝利で飾ることはできませんでした。
キャリアを通じてシュート力の課題を克服してこられなかったウェイドですが、実は今シーズンの3ポイントシュート成功率はキャリア最高の35%で、ここに来て新たな成長もみせています。ディフェンスをスピードで振り切ることが難しくなり、インサイドでのフェイクが通用しなくなってきた中で、アウトサイドからの得点力を増している36歳のウェイド。もしも来シーズンもプレーしてくれたら、高確率の3ポイントシュートで勝利をもたらしてくれるのではないか……そんな淡い期待も抱きたくなるのが今のウェイドでもあるのです。