ブランドン・イングラムとシェイ・ギルジャス・アレクサンダーの激突
12月末の段階で西カンファレンス2位だったペリカンズと13位だったサンダーがプレーイン・トーナメントの初戦で戦うことになるとは思いもしませんでした。1月以降に調子を上げたサンダーがシーズン終盤に失速し、逆に一気に順位を落としたペリカンズが復調してシーズンを終えたことは、アップダウンの激しかった今シーズンの西カンファレンスらしさでもあります。
24歳ながらスターターでは最年長のシェイ・ギルジャス・アレクサンダーが『分かっていても止められない』卓越したドライブを武器に得点を量産し、2年目のジョシュ・ギディーやルーキーのジェイレン・ウイリアムスらがポジションを流動的に変えて、ドライブとキックアウトを繰り返すサンダーのオフェンスは、ガードだらけの特殊な構成ながら強力なユニットとして機能するようになりました。
サイズの概念を無視して運動能力と連携で戦うサンダーをどのチームも止められなかったのですが、プレーオフが現実的な目標になると勝利を意識して主力のプレータイムが長くなり、疲労から試合終盤に失速する展開が増えてきました。若い選手が揃っているとはいえ、運動量をベースにしたスモールラインナップはスタミナ面で不安があります。
ペリカンズはヨナス・バランチュナスがサンダーの弱点であるゴール下で粘り強くパワープレーで押し込んでくるため、相性の悪い相手です。スタミナ問題で失速していく試合が多かったとはいえ、ペリカンズ相手にペースを落としたら勝ち目はなく、試合序盤からアレクサンダーがトランジションアタックを繰り返す必要があり、とにかくハイペースで戦うことが重要です。
しかし、ペリカンズにも運動能力の高いウイングが揃っています。ザイオン・ウイリアムソンの離脱から一気に勝率を落とす苦しいシーズンでしたが、プレーイン・トーナメント進出すら危うい状況になってからブランドン・イングラムが『強引にでも決めきる』姿勢を強くし、シーズン終盤の快進撃の原動力となりました。
スピード、スキル、高さを兼ね備えたイングラムの打点の高いジャンプシュートは止められない一方で、ハンドラーとして長くボールを持ってしまうとオフェンスの構築で問題が発生します。攻撃の起点としてチームメートの活用まで考えるよりも、ゲームメークはCJ・マッカラムに任せ、『強引にでも決めきる』姿勢でスコアリングの仕事に特化したのが成功の要因でした。
それは1試合の中でも同じことがいえ、試合序盤からイングラムがハンドラーとしてアタックしていくと、個人としては活躍してもチームオフェンスがワンパターンになりがちです。それよりも試合の流れに身を任せながら要所を締め、そして試合終盤に個人技で決めきるのが理想です。ルーゲンツ・ドートの厳しいマークが予想されますが、イングラムが試合を締めくくるのがペリカンズの勝ちパターンです。
アレクサンダーは試合を通してハイペースを作る得点が重要となり、イングラムは試合終盤に勝利をもたらす得点が重要となります。個人スタッツ以上に試合展開の中で輝きを見せるのはどちらか。エースの仕事が勝敗のカギを握ります。