渡嘉敷来夢

「勝つだけです。ファイナルの舞台は久しぶりなのでぶちかましたい」

Wリーグのプレーオフ、セミファイナルでENEOSサンフラワーズはデンソーアイリスと対戦。第1戦を71-67で競り勝つと、第2戦も61-59の激闘を制してファイナル進出を決めた。

第2戦のENEOSは渡嘉敷来夢との強力コンビで大暴れしていた長岡萌映子が第1クォーターで2ファウルを犯し、第4クォーターの最終盤でファウルアウトになった。長岡は最終的にわずか23分22秒のプレータイムに留まったが、渡嘉敷が40分フル出場し、12得点に加えて21リバウンドと圧巻のパフォーマンスでENEOSの堅守を支え、デンソーを振り切った。

渡嘉敷は激闘だったからこそ得られたものも大きかったと振り返る。「本当に我慢の時間帯が40分以上あったと思うくらいにタフな試合になりました。このゲームを経験して勝てたことは次に繋がります。もちろん反省点もたくさんありますけど、勝てたことが一番の財産だと思います」

ENEOSにとってファイナルは2年ぶりだ。しかし、前回のファイナル時、渡嘉敷は皇后杯で負った右膝前十字靭帯断裂の大ケガで欠場していた。コロナ禍によるシーズン中断もあり、渡嘉敷にとってWリーグのファイナルはリーグ11連覇を達成した2018-19年以来となる。もちろん、他チームへの敬意を渡嘉敷は常に持っているが、それでもファイナルの舞台に立てなかったことを振り返り「3位になって(ファイナル終了後の)表彰式に行ったのが屈辱的で、それが今でも忘れられないです」と明かす。

そして女王の座への返り咲きへ、次のように言い切る。「勝つだけです。ファイナルの舞台は久しぶりなので、ぶちかましたい。もう絶対に負けないです、ただそれだけです」

渡嘉敷来夢

ファイナル出場について「やっとスタートラインに立てた」

ここまでのプレーオフ、ENEOSは渡嘉敷と長岡のコンビで攻守に渡ってインサイドでアドバンテージを得ているのが大きな勝因となっている。それに加え、課題と言われていたベンチメンバーの奮闘ぶりがプレーオフで目立っているのも大きい。クォーターファイナルの富士通レッドウェーブ戦では、高田静と藤本愛瑚がともに11得点をマーク。また、今回のデンソー戦では中田珠未が2試合続けて6得点と渡嘉敷、長岡をベンチに下げて休ませる時の繋ぎ役として申し分のないプレーを見せた。

渡嘉敷はこのようにベンチメンバーの成長ぶりへの手応えを語る。「やっぱり一人ひとり、やるべきことをしっかり理解しています。苦しい時間帯でも思い切ってシュートを打ってくれたことに、本当に助けられました。スタッツに残っていない部分でも、ベンチから出てきて自分たちにエネルギーを与えてくれました。また、コートに立っていない時でも、試合に出ているメンバーがベンチに戻ってきた時にずっと良い声がけをしてくれています。ファイナルでも、チーム全員で戦っていきたいと思います」

渡嘉敷が言及する「思い切ってシュートを打ってくれた」ことは大きな成長だ。昨シーズンや今シーズンの序盤はベンチメンバーの消極的なシュートセレクションが目立っていた。打つべきタイミングで打たなかったことで、結果的にタフショットを放っては相手にトランジションを許し、簡単に失点する場面も少なくなかった。この積極的な姿勢は成功率アップを導くだけでなく、例えシュートが外れてもディフェンスがしっかり戻る時間も生み出せる。

また、同じインサイドプレーヤーである中田の奮闘ぶりについて聞くと、笑顔で信頼を強調した。「すごく良いですね。いつも自分と練習しているんで、そこに関しては自信を持ってと常に言っています。彼女は言ったことを練習の中でも一生懸命やってくれます。セミファイナルのプレーは期待通りと言いますか、いつも通りのタマ(中田)なんだと感じています。自分が膝をケガした時の皇后杯で彼女は活躍していますし、ポテンシャルは本当に高いです。だから自分は彼女ができると信じています。ファイナルの舞台でも今まで以上に力を発揮してくれると思っています」

そして「やっとスタートラインに立てました」と、渡嘉敷はファイナルについて語り、確固たる自信を見せる。「ここからのENEOSは強いと思います。自分は今のENEOSにすごく自信を持っていて、どんな状況になっても負ける気はしない。(2試合ともに接戦だったが)今日も、昨日も余裕を持てるようになったと思います。自分が余裕を持っていれば下の子たちもそれを見ているので、自ずとついてきてくれる。そこが変わったところだと思います」

今の渡嘉敷がコート上で試合を支配しているのは誰もが認めるところだ。その上で渡嘉敷は、勝ちたい気持ちの強さでも誰にも負けないと断言する。「勝ちを経験しているチームが、勝てていない時は本当に勝利に飢えています。この気持ちは多分、自分たちにしか分からないと思います。それをファイナルのコートで表現したいです」

ここ数年の溜まった鬱憤をファイナルで爆発させるために渡嘉敷は準備万端だ。彼女がファイナルでどんなプレーを見せてくれるのか待ちきれない。