2試合続けての惜敗で敗退「勝負どころで決めてくる部分で、力の差を感じました」

Wリーグのプレーオフはセミファイナルが行われ、レギュラーシーズン1位のデンソーアイリスはENEOSサンフワラーズと対戦した。第1戦で67-71と敗れたデンソーは、第2戦も最後までもつれる激闘を演じたが59-61と惜敗。シリーズ2連敗となり、ファイナル出場を逃した。

第2戦の出だし、崖っぷちのデンソーは各選手がエナジー全開で積極的に仕掛けていく。その結果、ENEOSの長岡萌映子、星杏璃の2人に第1クォーターで個人2つ目となるファウルを誘発させる。想定外の事態でローテーションが狂ったENEOSの隙を突いて、デンソーは赤穂さくらを軸に確率良くシュートを沈め第1クォーターで20-13と理想的なスタートを切る。

しかし、第2クォーターに入ると、オフェンスファウルが続くなど強引な攻めが目立ちリズムを崩す。そして、このクォーターだけで6得点を挙げた中田珠未、タフショットを沈めた藤本愛瑚とENEOSのベンチメンバーに活躍され、30-32と逆転を許してしまう。

後半に入ると長時間に渡って僅差の息詰まる攻防が続く。デンソーの髙田真希、ENEOSの渡嘉敷来夢のエース対決は互角の中、ともに3ポイントシュートが不発とこう着状態に。だが、宮崎早織や星といったガード陣によるドライブの決定力で上回ったENEOSが、第4クォーター残り3分で5点リードと先行する。

しかし、残り2分半にENEOSは長岡が痛恨のファウルアウトとなる。これで生まれたアドバンテージを突いたデンソーは、赤穂ひまわりが中田との1対1からプルアップの3ポイントシュートを決め残り1分19秒で2点差に迫る。しかし、クラッチタイムにこの優位を利用することができず、あと一歩届かなかった。

デンソーの大黒柱、髙田は厳しいマークにあう中でもファウルをうまく誘いフリースローで繋いで(10本中10本成功)、16得点7リバウンド5アシストを記録。さらに渡嘉敷を12得点に抑える立役者となるなど、攻守に渡ってハイレベルなプレーを見せた。

だが、残酷な結末となり、明暗を分けた差を「勝負どころで決めてくる部分で、力の差を感じました」と髙田は振り返る。「ENEOSさんは、ノーマークのシュートをしっかり決める。たとえば、リバウンドからのセカンドチャンスで中田選手、藤本選手がきっちり決めていました。逆に自分たちは、ノーマークのシュートを落としてしまった差なのかとすごく感じます」

若手がステップアップ「今まで以上に戦えたことを実感しています」

今シーズン、これでデンソーは皇后杯決勝、プレーオフとビッグゲームでENEOSから勝ち星を奪えずに終わった。無冠という結果だけを見ると、いつものシーズンと一緒だ。しかし、チームとして確かな成長を感じられたことも間違いない。

特に光ったのは若手の成長によって、チームの層が厚くなったこと。髙田と並ぶ大黒柱のひまわりがレギュラーシーズン終盤の故障でプレータイムを制限する中、この2試合とも接戦を演じられたことが何よりの証拠だ。髙田はこのように若手のステップアップを称える。「レギュラーシーズンを通しても、交代で出る選手がそれぞれの役割を把握しながら力を発揮し、試合の流れが変わって勝てた試合がいくつもありました。交代で出る選手はモチベーションを保つのがすごく難しいです。その中で力を発揮してくれたことは素晴らしいです」

また、この試合に代表されるように、自身の得点についても今まで以上にチームオフェンスの結果だと強調する。「今まで自分が無理やり攻めていたところを、他の選手がしっかりアタックして自分がノーマークになって決めただけです。チームプレーで生まれた中での自分のシュートでした。自分が攻められない時でも、他の選手が積極的に攻めてくれています」

そして、「結果がすべて」と勝負の厳しさを受け入れる髙田だが、これまでにない充実感を得られた。そこには彼女が、ずっと大切にしている信念がある。

「今シーズンが15年目となりますが、個人としてもデンソーとしても、レギュラーシーズンで1位になったのは初めてでした。日本だとシーズンは半年くらいですが、それ以外の期間でもずっと練習をしており、すごく長く感じる部分があります。こうやって負けて終わると、すべてが後悔、悔しさで終わってしまいます」

「でも、自分はその過程にすごく価値があると思っています。結果だけでなく、過程にも素晴らしいものがあるのに、負けて終わると感じることができない。それが、レギュラーシーズン1位となり、少しだけですが、自分たちがシーズンだけでなくオフの期間も頑張ってきたと感じられる。これをデンソーとして感じられるのは良かったです」

最後に髙田は、次のように締め括っている。「こういう舞台でも今まで以上に戦えたことを実感しています。負けて悔しい気持ちはありますが、このチームでもう試合ができなくなることに寂しい、悔しい気持ちの方が大きいシーズンになりました」

今シーズンもタイトルには届かなかったが、この険しい壁を乗り越えるための土台をしっかり作ることができた。来シーズンこそ、優勝カップを掲げる髙田の姿を見られるのではないか。その期待が高まるデンソーの戦いぶりだった。