山本麻衣

出だしは苦しむも、第2クォーター以降は激しいディフェンスでリズムを作り快勝

Wリーグのプレーオフはセミファイナルに突入し、3連覇を目指すトヨタ自動車アンテロープスがシャンソン化粧品シャンソンVマジックと対戦した。3ポイントシュートを効果的に決めると、計10個のスティールに象徴される強度の高いディフェンスも光ったトヨタ自動車が78-64で快勝した。

試合の出だし、トヨタ自動車は馬瓜ステファニーが相手ディフェンスを崩し、他の選手がイージーシュートを決めていく。特に梅沢カディシャ樹奈が開始3分半で8得点をマークと、ゴール下で確率良くシュートを決めてリードを奪った。しかし、シャンソン化粧品のガード陣の積極的なドライブに苦しむと、さらにベンチスタートのイゾジェ・ウチェの高さを生かしたオフェンスを止められずに17-19で第1クォーターを終えた。

第2クォーターに入ってもウチェに手を焼くトヨタ自動車は、19-26とリードを広げられてしまったが、ここから徐々にアジャストしていくと、激しいプレッシャーでこのクォーターだけでシャンソンから10のターンオーバーを誘発。守備で流れを引き寄せたトヨタ自動車は、3点ビハインドの残り約5分から怒涛の13連続得点で一気に逆転すると、さらに山本麻衣が終了間際に3ポイントシュートを決め、10点リードで前半を終えた。

後半に入ってもトヨタ自動車の流れは変わらず。引き続き堅守を継続し、シャンソン化粧品にタフショット打たせると、逆に自分たちはオープンをしっかり作り、平下愛佳の3ポイントシュートなどに繋げていく。このクォーターでも22-14と突き放したトヨタ自動車はセーフティリードを保ち、余裕を持って逃げ切った。

トヨタ自動車の大神雄子ヘッドコーチは次のように振り返る。「若いチームなので、一つひとつの経験が選手にとって自信になります。すごく大事に準備をしてきた分、勝ててホッとしています。もちろんプレーオフは明日勝ってこそで、今日は今日と切り替えて明日に繋げていきたいです。ウチェ選手に対し、ウチのインサイドの選手が身体を張って頑張ってくれました」

ヘッドコーチが言及するように、今シーズンのトヨタ自動車は昨シーズンのチームから大きな若返りを果たした。メンバーが変わる中でもリーグ有数のタレント集団はレギュラーシーズンで2位と強さをしっかり証明したが、それでもレギュラーシーズンとポストシーズンは別物だ。

山本麻衣

「今シーズン作り上げてきたものが今日の試合でも随所に出ました」

指揮官として初めてのプレーオフとなった大神ヘッドコーチは「私もガチガチだったと思います(笑)。何回経験してもプレーオフは何か特別なものがあります。それがモチベーションになったり、良い緊張ととらえることもできます」と言う。そして、次の様に今日のパフォーマンスを評価した。

「昨シーズンからベテランの選手が多く抜けて、チームが変わったといっても間違いがいないです。去年からスタートとして出ているのは山本、馬瓜の2人だけです。あとの選手はどちらかというと、スタートや試合に長く出るのが初めてという選手です。その中で山本、馬瓜、川井(麻衣)を中心に今シーズンに作り上げてきたものが今日の試合でも随所に出ました。そこに梅澤、平下といった選手たちがハマっていくことができました」

実際にコアメンバーとなる3人は山本が3ポイントシュート5本成功を含む19得点4リバウンド3アシスト2スティール、馬瓜が17得点9リバウンド6アシスト4スティール。川井が8得点13アシスト3リバウンドと揃って申し分のない活躍ぶりだった。昨シーズン以上に大きな責任を担っている山本だが、本人もそれは強く自覚している。「悪い流れになった時、ポイントガードが下を向いていたらチームに伝染してしまうので、チームリーダーとしてみんなを鼓舞する。去年とはまた違った気持ちで試合に臨んでいます」

そして、ここ一番で自分が決めるエースの覚悟も持っている。「全員が得点を取れるので無理にシュートを打ちに行くことはないですが、積極的にシュートに行くようにしています。今日は良い判断ができたと思います」

トヨタ自動車にとって、初戦はレギュラーシーズンからの積み上げをしっかり披露して勝つ理想的な内容だった。この良い流れを継続し、今日の第2戦を制してファイナル進出を決めるには、引き続き山本、馬瓜、川井の『ビッグ3』の活躍が欠かせない。