渡嘉敷、長岡萌映子のインサイドコンビで38得点、8アシストと富士通の守備を攻略

WリーグのクォーターファイナルでENEOSサンフラワーズと富士通レッドウェーブが対戦。一発勝負の中、渡嘉敷来夢と長岡萌映子のインサイドコンビが、個の強さと阿吽の呼吸によるコンビプレーで相手ディフェンスを圧倒し、ゴール下を支配したENEOSが76-69で勝利した。

試合の立ち上がり、ENEOSはゴール下の激しいディフェンスで富士通のドライブを防ぐと、オフェンスでは渡嘉敷の力強いインサイドアタックで加点し、いきなり10-0のランと見事な先制パンチを繰り出す。そのままペースを維持し、第1クォーターを23-14と先行する。

第2クォーターに入ると富士通にアジャストされ、渡嘉敷へのゴール下へのパスをカットされるなど、ターンオーバーを重ねてリズムを崩してしたが、オフェンスが停滞しても守備でしっかり我慢した。また、渡嘉敷へのマークが強まることで生まれたスペースを突き、このクォーターだけで長岡が9得点を記録。リードを11点に広げてハーフタイムを迎える。

後半の立ち上がり、富士通の町田瑠唯が3ポイントシュートにドライブからの連続得点と、よりアグレッシブに仕掛けていく。これで受け身になってしまったENEOSは、さらに宮澤夕貴にタフショット決められ0-9のランを許し、前半と真逆の展開となり一時は2点差にまで肉薄される。だが、このピンチにENEOSは藤本愛瑚のセカンドチャンスポイント、高田静の3ポイントシュートによる連続得点と、課題とされていたベンチメンバーの奮起で悪い流れを断ち切る。

これで落ち着きを取り戻したENEOSは、第4クォーターに入ると再び渡嘉敷、長岡のインサイドを軸に着実に加点。こうして守備を収縮させることで、ガード陣も余裕を持って外角シュートを打つことができ、残り3分には高田の3ポイントシュートで76-61と大きく突き放す。終盤に富士通の前からのプレスディフェンスにミスを連発して追い上げられたが、それでもセーフティリードを保ち、余裕を持って逃げ切った。

この試合、ENEOSの大黒柱である渡嘉敷は19得点13リバウンド5ブロック4アシストと圧倒的なパフォーマンスを披露した。ただ、あくまでチームでつかんだ勝利であることを強調する。「どんな形であれ、勝つことができてよかったです。個人的には我慢の時間帯が長くて、思い通りにいかなかったですが、その中でも仲間がリバウンドを取ってくれたり、自分を信じて出してくれたパスを決めることができたのは次に繋がると思っています」

デンソーとのセミファイナルへの意気込み「髙田選手は自分が止めます」

Wリーグのプレーオフは、セミファイナル以降は2戦先勝だが、クォーターファイナルは一発勝負だ。ENEOSは今日がプレーオフ初戦だったのに対し、富士通は前日に試合をして勝利している。連戦でない分、コンディション的にはENEOSが有利だが、それよりも渡嘉敷はマイナス面の方が大きいと感じていた。

「相手は前日に試合をしてこの体育館、雰囲気にすごく慣れています。自分は土日と試合をやりたいと思うタイプです。日曜日からの試合になって今シーズンで一番緊張しましたし、勝ててホッとしました」

また、安堵したのは、富士通へのリベンジを果たせたことも関係している。「個人的には『(クォーターファイナルで)富士通、来い』 と思っていました。昨シーズンのセミファイナルで負けて、今シーズンも第2週に連敗したので、やっぱり勝ちたい相手でした。そういう意味でも気持ちがちょっと楽になりました」

振り返れば第2週、富士通に連敗を喫した後の取材で、渡嘉敷は悔しさとともに「この2連敗で良い形に進んでいくんじゃないかと感じています。ただ、これでダメだったらそこまでだと思います」と、危機感を露わにしていた。

そして迎えた今日の大一番で、ENEOSはあの連敗を糧に変わったことを証明した。渡嘉敷はチームの成長ぶりをこう語る。「中と外のバランスがすごく良くなっています。(連敗した時は)代表活動やケガ人がいて、チームで合わせる時間が少なかったです。そこに時間を費やすことでコミュニケーションも増えて、今は自分がいて欲しいところにいてくれる。欲しいタイミングでパスを入れてくれるなど、細かい部分での考えが合ってきていると思います」

特にこの試合でも大暴れだった長岡(19得点4アシスト)とのコンビには、絶大な自信を見せている。「ガードがプレッシャーをかけられてうまくパスを出せない時でも、萌映子は自分をいつも見てくれています。そして、2人によるハイローのプレーが、シーズン開幕の時よりどんどん増えている。このプレーは、どのチームにも止められないと感じています」

チームの確固たる進化を示しての富士通へのリベンジ達成は、ENEOSにとって大きな弾みとなる。セミファイナルの相手はレギュラーシーズン1位のデンソーアイリスで、この試合の大きな鍵は渡嘉敷とデンソーの髙田真希によるゴール下の対決となる。渡嘉敷は「髙田選手は自分が止めます」と力強く言い切る。この台詞が有言実行となった時、ENEOSがファイナルの舞台に戻っているはずだ。