ヤニス・アデトクンボ

写真=Getty Images

「数カ月後に対戦するのが正しいこととは思えない」

今シーズンもキャリアハイを塗り替えるペースで得点、リバウンド、アシストなど個人スタッツを伸ばしているヤニス・アデトクンボは、現在カンファレンス2位と躍進するバックスを引っ張っている。

そんな彼には譲れない『流儀』がある。それは、他チームのエース級が集まって行われるシーズンオフの合同トレーニングに参加しないことだ。今年のオフには、以前から熱望していたレイカーズレジェンドのコービー・ブライアントとのワークアウトを実現させたが、コービーはすでに現役を引退している上に、他球団の仕事をしているわけでもないため、アデトクンボは自分のプレーについて率直に意見を求めることができた。

だが、それはあくまで例外。ここ数年はオフになるたびに、他チームのスター選手から合同トレーニングに誘われているが、すべて断っているそうだ。今年も、ニューヨークでケビン・デュラント、レブロン・ジェームズ、カーメロ・アンソニー、ジェームズ・ハーデンら豪華メンバーが一堂に会してピックアップゲームを行い話題になったが、アデトクンボも誘われていた。

アデトクンボは、『The Athletic』に「誘ってもらえてうれしいけれど僕はいいよ、という感じで断った」と語った。

最近ではスター選手が集まってピックアップゲームを行うことは珍しくない。むしろ、シーズンオフの慣例になりつつある。シーズン中はオールスターゲーム以外では同じサイドに立つことがない彼らにとって、一緒に練習することで互いの技術を吸収できるメリットは存在する。しかしアデトクンボは、他チームの選手とは一線を画する方を好むようだ。

「夏に一緒に練習して、数カ月後に対戦するのが正しいこととは思えない。他の選手には問題なくても、自分は違う。例えば、自分がKDやレブロンと一緒に練習する仲だとしようか。それでも試合前日に夕食に出掛けるとか、あり得ないよ。絶対にない」

それでもアデトクンボはデュラントやレブロンを目標にしている。デュラントはアデトクンボの才能を早くから称えていたが、2人は今シーズンの初対戦まで連絡先すら交換してなかったという。そしてレブロンとは、まだ個人的な付き合いはない。ただ、アデトクンボは、将来的にレブロンと一緒に練習する可能性を完全に否定してはいない。「もし彼と自分の2人きりなら」と、含みを持たせた。「でも、ピックアップゲームは無理だな」

アデトクンボが目標にしている2人が、2011年と12年のオフに合同トレーニングを行ったのは有名な話だ。それ以降のデュラントの活躍は、言うまでもない。アデトクンボは「KDはレブロンから多くを吸収して、それを彼との対戦で生かしている。それは、自分が周りの選手にしてもらいたくないことだね」と言う。

現代のスポーツには情報戦が欠かせなく、合同ワークアウトに参加しなくても、各チームの分析担当が他チームのエースの特徴、長所、短所を丸裸にしているのだから、それを避けても意味がないようにも思う。アデトクンボもそれを理解しているだろうが、彼は精神的な部分のことを言っているのだろう。

選手間のフレンドリーな関係が主流の現代では珍しいタイプかもしれないが、その効果は彼のスタッツ、プレーを見れば明らか。『グリークフリーク』のテクニック、練習方法などの秘訣は、今しばらく門外不出のままのようだ。