シュートタッチが悪い中、9本のフリースローをすべて決めて13得点
川崎ブレイブサンダースは群馬クレインサンダーズとの第2戦に90-80で勝利し、同一カード連勝を達成した。
試合は川崎が出だしで0-6の先制パンチを食らうもすぐに立て直し、その後は終盤まで接戦が続いた。川崎がラスト5分間を14-5と圧倒したように、勝負どころのパフォーマンスが勝敗を分けたが、この時間帯で存在感を見せたのがマット・ジャニングだ。
最終クォーター残り5分44秒、トレイ・ジョーンズに速攻から3点プレーを決められ、川崎は1点差に迫られた。続くポゼッションでジョーンズとマッチアップしたジャニングは抜群の反応でオフェンスファウルを引き出し、群馬は個人4つ目のファウルとなったジョーンズをベンチに下げた。ジョーンズの代わりに投入された八村阿蓮とマッチアップしたジャニングは、冷静にドライブを正面から受け止め、再びオフェンスファウルを誘発した。
その後、川崎はニック・ファジーカスの連続バスケット・カウントなどで突き放したが、ジャニングの一連のプレーが良いリズムをもたらしたことは間違いない。実際に群馬の水野宏太ヘッドコーチも「トレイ選手が4つ目のファウルをして、残り5分になった時が一つの分かれ目となった」と、敗因の一つに挙げている。
ジャニングは2つのビッグプレーについてこのように振り返った。「ジョーンズ選手がファウルトラブルなのは分かっていたので、あそこで前に入ってチャージングをもらえたのはすごく大きなプレーでした。また、若い八村選手がドライブしてくると分かったので、前に入ってテイクチャージを取れたのも良かったです。この2ポゼッションをストップできたことが試合をコントロールすることに繋がったと思います」
シューターのイメージが強いジャニングだが、このビッグプレーが象徴するようにディフェンスにも自信を持っている。「これまでのチームではシューターを止めるディフェンスを求められたこともあります。群馬にはどこからでもアタックできるジョーンズ選手がいて、賢次さん(佐藤賢次ヘッドコーチ)からもマッチアップしてくれと言われました。今日はディフェンスゲームでしたし、彼を止めることができたのは大きかったです」
この日のジャニングは放った4本の3ポイントシュートをすべて外し、フィールドゴール成功率も20%と決してシュートタッチは良くなかった。それでも、大事な終盤にハンドラーを務め、最終クォーターで4得点2アシストを記録。さらにペイントアタックをし続けたことで両チーム最多の9本のフリースローを獲得し、13得点を挙げた。接戦であればあるほどフリースローの重要性は増し、1本のフリースローが勝敗を分けることもよくある。ジャニングはフリースローの大切さをこのように説いた。
「どんな選手でもシュートが入らない日は絶対にあります。僕も今日は入らなかったけど、その中で大事なのはフリースローを9本打てたことです。僕はファウルを誘ってフリースローでアドバンテージを取ることが大事だと思っています。今は93%くらい(93.9%、出場数が足りないものの成功率はリーグ1位)で、フリースローは最も効率の良いプレーです。相手をファウルトラブルにする上でも重要な要素になります」
真のリーダーとして「嫌われ役になることも責任の一つ」
プレー面で勝利に大きく貢献したジャニングだが、彼がチームにもたらしている良い影響はパフォーマンス以外にもある。今シーズンの川崎は『全員キャプテン』を掲げ、キャプテンを一人に定めていない。それは一人ひとりのリーダーシップを高める狙いがあり、上下に序列はないが、その中でもジャニングは高いリーダーシップを求められている。佐藤ヘッドコーチは言う。
「今年は『全員キャプテン』をコンセプトでやっています。みんなチームのことを考えてはいるけど、それがなかなか表に出てこず、内側だけで考えているようなところが前半戦でありました。全員キャプテンは変わらないですけど、その中でもマットにはリーダーとして、みんなのキャプテンシーを引っ張っていくことをお願いしています。いろいろな経験をしてきて、勝ち方も知っている選手で、ディフェンスでの声掛けやタイムアウト中の一言を見ても一番信頼しています。勝負どころで何が必要か、若い選手にも伝えてくれています」
ジャニングは「何かを変えたわけではない」と前置きをしながらも、全員のリーダーシップを引き出すために、責任を持ってチームメートと接しているという。「全員がキャプテンなので、全員がしっかり声を出して意見を言わなければいけません。もちろん、時には嫌なことを言わなければいけないですし、嫌われ役になることも責任の一つだと思っています。チームが良くなるためには誰かが言わないといけないので、僕がそれを示していければと思っています。チームメートからも信頼されているからこそ、この役割を任せられたと思うので、全員のリーダーシップを引き出していきたいです」
ジャニングを中心にチームがより結束していけば、中地区首位争いから抜け出し、その先にある栄光をもつかみ取れるかもしれない。