ベン・シモンズ

ネッツのタレントを束ねる司令塔の役割をこなせるか

ネッツはトレードデッドラインにカイリー・アービングとケビン・デュラントを放出して全く別のチームとなった。チーム再編までは31勝20敗、その後は8勝11敗と、ペースを大きく落としてはいるが東カンファレンス6位とプレーオフ戦線に踏み留まっている。残り12試合のうち9試合をバークレイズ・センターで戦うという地の利を生かして、プレーイン・トーナメントを回避したいところだ。

ただ、敵地での5連戦を3勝2敗で乗り切って迎えたホーム4連戦の初戦ではキングス相手に96-101で敗れた。大きな差は付かなかったが、後半に入ってからはほとんどの時間帯で2ポゼッション以上のリードを許す力負け。ミケル・ブリッジズが23得点、スペンサー・ディンウィディーが18得点7アシストとチームを引っ張っているが、戦力をどう噛み合わせればチームとして最大の力が出せるのかは試行錯誤の段階にあり、シーズン終盤のチーム力としてはライバルに見劣りする。

チームとしてどう戦うか手探りを続けるネッツで、一人遅れているのがベン・シモンズだ。現地2月15日のヒート戦を最後に、オールスターブレイクを挟んで1カ月も欠場が続いている。ここしばらくは不振続きだが元オールスター選手であり、26歳と若く、チームで一番の高給取りでもある。セブンティシクサーズではメンタルの問題でプレーできなくなったが、ネッツ移籍を機にその状態からは脱したはず。それでも欠場期間が伸び、新しいバスケに組み込めないのはチームにとって大きなマイナスだ。

ただ、それについて毎日のように質問されるヘッドコーチのジャック・ボーンはストレスを感じているようで、「もうシモンズの話は勘弁してくれ」と言った。

「彼がもうプレーしないという話は存在しない。私は彼が復帰してプレーすることを期待している。腰と膝の両方にケガを抱えていて、リハビリは前進している。復帰に向けて頑張っている姿をコート上で見られてうれしいと思っている。伝えられることが出てきたら私から言うから、それまでシモンズについての話はなしだ」

これまでのネッツはデュラントとアービングにボールを託し、周囲がサポートするバスケを続けてきた。だが今は、ディンウィディーがそれをやるとボールを持ちすぎる弊害が大きく、ブリッジズはボールを長く持つタイプではない。

シュート力はなくてもディフェンスとリバウンドに強く、ボールプッシュのできる司令塔タイプのシモンズが復帰すれば、ネッツにとっては大きな力となり得る。ただ、周囲との連携はこれから構築しなければならないし、何よりも彼自身が自信を取り戻さなくてはならない。

指揮官ボーンもそれは十分に理解しており、シモンズの復帰に期待する気持ちは大きいはずだ。良いタレントは揃うが、チームとしての軸が通っていないネッツを束ねる存在にシモンズはなれるのか。今の彼には負担が大きいかもしれないが、プレーオフで周囲を驚かせるためにはそれぐらいの『劇的な変化』が必要となる。