カイ・ソット

いきなりの先発出場で10得点3ブロックも「ベストと言えるものではなかったです」

3月8日、広島ドラゴンフライズは琉球ゴールデンキングスと対戦した。中断期間明け一発目となるこの試合で、広島は2月7日に加入を発表したフィリピンの至宝、カイ・ソットが先発起用でBリーグデビューを果たす。試合には78-86で敗れたが、持ち前の高さと機動力を武器にゴール下で存在感を示した。

広島は試合の立ち上がりから、ソットと外国籍選手2名を同時起用するビッグラインナップで、琉球のペイントアタックを防ぐと、オフェンスでは高さと機動力を備えたインサイド陣の特徴を生かし、トランジションから高確率でシュートを決める。だが、カイル・ミリングヘッドコーチが「約1カ月ぶりの試合で、序盤のターンオーバーはシーズン開幕の時のようなミスでした」と振り返ったように、試合勘のなさが響いたのか凡ミスが多く、突き放すチャンスを逃す。そして、琉球に高確率で3ポイントシュートを決められ、前半は35-36と互角の展開で終えた。

第3クォーターに入ると、広島は琉球にディフェンスリバウンドから走られ、失点を重ねてしまう。前半とは逆に辻直人らによって3ポイントシュートを確率よく決めて、ソットのいない時間は琉球のインサイドアタックを止められず、リードを許してしまう。

第4クォーター、広島は残り7分にソットをコートに戻し、3-2のゾーンディフェンスを仕掛けるが、直後に琉球の田代直希に3ポイントシュートを決められ流れを変えることができない。その後も広島はドウェイン・エバンスの活躍などで食らいつくが、岸本隆一の連続3ポイントシュートを筆頭に琉球に要所でビッグショットを決められたことで最後まで主導権を取り返すことができなかった。

西地区上位対決で痛い黒星を喫してしまった広島だが、注目のソットはチーム合流から間もない中、18分55秒のプレータイムで10得点2リバウンド3ブロックを記録。220cmの高さに加え、琉球の桶谷大ヘッドコーチが「彼はスペースがあると跳べます」と評したように、相手のドライブについていけるフットワークと跳躍力もあり、スタッツに残らない部分で琉球の選手たちにプレッシャーを与えていた。

前評判に違わぬインパクトを与えたソットだが、本人は「僕のパフォーマンスはベストと言えるものではなかったです。いくつかシュートも外してしまいました」と満足していない。だが、実際にチームの一員として公式戦を戦ったことで、広島の可能性をより強く感じることができたと強調する。

「多くのポジティブな部分がありました。僕たちには、さらに強くなるポテンシャルがあります。これからの練習でよりアジャストし、ミスを修正できると思います。次の試合がより楽しみです」

カイ・ソット

広島指揮官「発展途上であり彼に多くのプレッシャーをかけたくはないです」

デビュー戦でいきなり先発起用の決断を下したミリングヘッドコーチは、ソットのプレーを称える。「チームに合流して最初のゲームで、良いプレーをしてくれました。何本かブロックをし、シュートも決めてくれました。これからどんどん良くなっていくと思います」

ただ、同時に指揮官は、周囲の高まる期待に釘を刺す。「彼はまだ20歳です。素晴らしい選手ですが、発展途上であり彼に多くのプレッシャーをかけたくはないです。(広島加入前にプレーしていたオーストラリアの)NBLでも1試合平均13分くらいの出場時間でメインの選手ではなかったです」。さらにミリングヘッドコーチは、彼に多くを依存することはないと続ける。「カイは良い選手ですが、すべての選手が彼と同じくらい大切です」

ソットの加入は、彼自身の非凡な能力に加え、リーグ有数のオールラウンダーであるエバンスを3番ポジションで起用できるなど広島にさまざまプラス効果をもたらす。「僕が加入してから最初の試合で、まだお互いにどうプレーするべきか探っているところはあります」とソットが振り返ったように、連携はまだまだ未成熟だ。しかし、これは時間が解決してくれる部分でもある。

ソットは次のように意気込みを語る。「お互いにどのようにプレーしたらうまくいくのか分かれば、僕たちは素晴らしいチームになります。まだ、多くの試合があり、この部分について学習できる機会はたくさんあります」

レギュラーシーズンは残り21試合。過密日程で満足にチーム練習がこなせない中、新戦力をチームにフィットさせるのは簡単なことではない。だが、ソットの加入により、今の広島はリーグ随一の伸び代を持つチームとなったことは間違いない。フィリピンの至宝は、リーグの勢力図を一気に変えられる存在能力を持っている。