「3度目の正直ではないですけど、強い気持ちで挑んだ結果として残れました」
日本代表は2月26日、ワールドカップ予選の最終戦となるバーレーン戦を95-72と快勝した。一昨日のイラン戦で代表デビューとなった帰化枠のジョシュ・ホーキンソンが22得点10リバウンド4アシストと新戦力の台頭が目立つ中、この試合で新たに代表デビューを果たしたのが川真田紘也だ。
204cmの高さとコンタクトの強さが光る24歳の川真田は、所属する滋賀レイクスで今シーズン平均13分以上のプレータイムを獲得と大きく出番を増やし、注目を浴びている若手ビッグマンだ。このBリーグでの奮闘ぶりもあってWindow4以来となる代表合宿への招集を受けると、厳しい競争を勝ち残り念願のFIBA公式戦出場となった。
合宿当初の取材において川真田は次のように自身のアピールすべきところを説明した。「トム(ホーバス)さんは僕に3ポイントシュートは求めていなくて、スクリーンをかけたりリバウンドを取ること、ゴール下での1対1をやってほしいと言われています」
また、B1において4番、5番ポジションで安定した出場機会を得ている数少ない日本人ビッグマンとしての矜持も語っていた。「外国籍と対峙するのが当たり前なので、Bリーグの中で国際試合に一番近いポジションだと思います。そういう部分でもアドバンテージはあると思います」
そして今回、ついに合宿のサバイバルレースを生き残り念願の日の丸のユニフォームを着てコートに立った。「これまで合宿に参加したWindow3と4で両方とも落ちていたので、3度目の正直ではないですけど強い気持ちで挑んだ結果として残れました。これまでは候補止まりでしたが、代表に入れて試合に出られたことは自分にとって大きなステップアップでうれしいことです」
「ジョシュ、飛勇に負けない何かをもっと試合で出したかった」
このように喜ぶ川真田は「試合前夜はワクワクしていました」と語ったが、一方で6分15秒のプレータイムで2得点2リバウンドの内容には「悔しいです」と充実感はない。「今回みたいな試合では短い時間でどれだけ自分のプレーを出して、トムさんに『川真田はできるから、もっと出そう』と思わせないといけなかった。そうなるようにアピールができなかったです」
限られた出番の中でもコンタクトの強さを生かし、オフェンスリバウンドを押し込んで初得点を挙げたプレーは彼の持ち味が表れた瞬間だったと感じる。だが、川真田は「あれくらいでは全然ダメです」と、厳しい自己評価だ。そう思うのは例え日本代表であっても「選ばれたことはうれしいですけど、やっぱり試合に出てなんぼだと思います」との強い思いがあるからだ。それでも、ただ悔しいで終わることはなく、自分が何をするべきかしっかり先を見据えている。「ジョシュ(ホーキンソン)は得点が取れる。飛勇はリバウンドの力がすごいです。この2人に負けない何かをもっと試合で出したかったですが、うまくいかずに出場時間が増えなかったです」
この『何か』は、まだ試行錯誤だがイメージするものはある。「もっとスクリーンをうまくなるなど、2人とは違うところが強みになるようにBリーグの試合でも挑戦していきたいです」
イラン戦では東海大2年の金近廉が10代でのフル代表デビューを飾ると、いきなり20得点を挙げシンデレラボーイとなった。だが、2シーズン前にはB2の佐賀バルーナーズで1試合平均5分以下のプレータイムと全くの無印だった川真田が、そこから驚異的な成長でフル代表デビューにまで到達した道のりも、金近に負けないくらいインパクトを与えるものだ。川真田のサクセスストーリーはようやく序章が終わったばかり。これからの代表活動への意気込みを彼はこう語る。「次の目標としては出場時間を獲得することです。今回の使われ方を見ると先にジョシュが出て、次に飛勇が出て、自分は5番ポジションの3番手です。どんどん上を目指して、コンスタントに試合に出られる選手になれるように頑張りたいです」
Window6におけるホーキンソン、渡邉の台頭は日本のインサイド陣にとって頼もしい限りだ。ただ、選手層が厚くて困ることは全くなく、チーム力の底上げには新しい戦力の突き上げが欠かせない。代表デビューで満足せずに出番を求める川真田の貪欲さは、彼だけでなく日本代表のレベルアップの助けにもなる。明るい性格でムードメーカーになっている点も含め、川真田の日本代表における存在感は確実に大きくなっている。