スタンディングオベーションに迎えられ、約2カ月ぶりの出場を果たす
ニックスはオールスターブレイク明けのウォリアーズ戦、ペリカンズ戦の2日連続の試合でいずれも快勝を収め、連勝を5に伸ばした。これで37勝27敗、プレーオフへのストレートインとなる東カンファレンス6位につけている。
オフに獲得したジェイレン・ブランソンが絶対的な司令塔となり、ジュリアス・ランドルとRJ・バレットとともにチームの核となった。2年目のクエンティン・グライムズは先発シューティングガードに定着し、一時は伸び悩んでいたエマニュエル・クイックリーはシックスマン賞の候補に挙げられている。トレードデッドラインにペリカンズからやって来たジョシュ・ハートも良いスタートを切り、心強い戦力となりそうだ。
そんな好調なチームにあって、取り残された形になっているのがデリック・ローズだ。トム・シボドーはタイムシェアを好まず、限られたメンバーで試合を行うタイプのヘッドコーチ。2人はブルズとティンバーウルブズで長く一緒に戦ってきたが、今シーズンのシボドーは若手中心で戦うことを決め、ローズをローテーションから外した。
同じようなことは過去にも起こっている。昨シーズンにはケンバ・ウォーカーがローテーションから外され、退団することになった。ローズは今年に入ってから完全にローテーションから外れ、試合に出場せずベンチから若手にアドバイスを送る役回りに。トレードデッドラインが過ぎると、契約をバイアウトして新しいチームへ行くと噂され、いくつかのメディアはサンズと交渉中と報じた。
ブルズで8シーズンを過ごす間に、ローズはNBAのトップスターへと登り詰め、それから膝を壊して地獄を味わった。その後は様々なチームを渡り歩き、主役から脇役へと立場を変えて現在に至っている。34歳となった今、残されたキャリアはそう長くない。プレーヤーとしての自分を必要とするチームに移籍する、それが優勝争いのできるサンズであれば十分に良い選択肢に思える。
それでもローズは、現地2月25日のペリカンズ戦を前に「移籍はしない」とメディアに宣言した。
「誰ともそんな話はしていないんだ。考えてもいない。それなのに移籍の話が出るのはどういうことなんだろうね。トレードデッドラインとその後、僕は自分のリハビリに専念していた。僕が移籍を要求したり、クラブが僕をどこかに移籍させるのであれば、事前に話があると思う。そんな話はなかったから、トレードデッドラインも落ち着いて過ごしていた」
ブルズからトレードされた時は、絶対的なエースだったにもかかわらず事前に何も聞かされず、ローズは人生最大のショックを受けた。当時の状況をよく知るシボドーはそれを繰り返すことはない。
そしてペリカンズ戦、27点差と大量リードで勝敗の決した第4クォーター残り2分半、観客がローズの名を叫ぶ。ベンチから立ち上がってユニフォーム姿になったローズはスタンディングオベーションに迎えられ、そしてベンチの若手たちの拍手に送られて、約2カ月ぶりにコートに立った。
得点こそなかったが、ローズがボールを持ち、シュートを放つたびにマディソン・スクエア・ガーデンは大いに盛り上がった。「僕はここが気に入っているんだ」。そう語るローズは、ニックスでまだ自分の役割があると感じている。