テーブス海

文=泉誠一 写真提供=UNCW SEAHAWKS

ポイントガードは戦況を見極め4人を動かす『専門職』

昨今、日本はポイントガードが足りていない。クラブやメディア関係者と話していても、その話題になることが多い。ホームで2連勝し、ワールドカップ出場圏内に食い込んだ男子日本代表のメンバーを見れば一目瞭然である。予備登録メンバー24名のうちポイントガードは4人だったが、実際に今回ロスター入りしたのは富樫勇樹(千葉ジェッツ)と篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)の2人のみ。招集されなかった宇都直輝(富山グラウジーズ)とベンドラメ礼生(サンロッカーズ渋谷)はいずれもコンバートされた選手であり、まだまだ経験値が足りていない。

ポイントガードの大型化は着手したばかりでもある。ボールを運ぶだけであれば、比江島慎(ブリスベン・ブレッツ)や田中大貴、馬場雄大(ともにアルバルク東京)、渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ)だってできる。だが、「運べないことはないが、ディフェンスにプレッシャーを掛けられるとキツくなる。早くポイントガードが出てきてほしいと思う時もある」と以前、田中は話していた。ポイントガードはコート上のコーチとなって、戦況を見極めて4人を動かさなければならない『専門職』である。

直近3試合はいずれも2桁アシストをマーク

日本人ポイントガード不足に希望の光を射すのがテーブス海である。今年からノースカロライナ大ウィルミントン校に進み、ゴンザガ大学のエースとして躍動する八村塁と同じNCAAディビジョン1の舞台に挑んでいる、188cmのポイントカードだ。

2試合行われたプレシーズンゲームの初戦こそベンチスタートだったが、それ以降は先発で起用され、これまでレギュラーシーズン9試合すべてで真っ新なコートに立ち続けている。アシスト数は平均7本(全米ランキング8位)。直近3試合は14本(イースタン・イリノイ大学戦)、10本(イースト・カロライナ大学戦)、昨シーズンのNCAAトーナメント出場校のデビッドソン大学戦でも10本と3連続2桁アシストをマークする。ファウルトラブルで苦戦したデビッドソン大学戦以外は得点も2桁を超えており、ダブル・ダブルの活躍が評価され、CAAカンファレンスのルーキー・オブ・ザ・ウィークを受賞した。

開幕戦こそ7アシストを記録したが、その後の2試合は不名誉なターンオーバーがスタッツの最高値でもあった。開幕戦のキャンプベル大学戦は5つ、2戦目のスタンフォード大学では8つも犯している。コート上で誰よりもボールを持つ機会が多いポイントガードであり、致し方ない部分もある。しかし、攻撃の起点となるからこそターンオーバーは失点に直結し兼ねない。4戦目のアレン大学戦では、初めて2桁得点を挙げた。同時に、ターンオーバーは3つに抑えた。

ここからテーブスの快進撃が始まった。その後はいずれもターンオーバーを3つ以下に抑え、我慢できている。前回のデビッドソン大学戦のターンオーバーは2つだったが、競った場面でのラストプレーでミスしてしまったのは反省点。しかし、まだまだルーキーだ。ミスを恐れずに思い切ってプレーし、多くのことを吸収することこそが成長に繋がる。

テーブス海

次戦は全米14位の本家ノースカロライナ大と対戦

日本にポイントガードがいないわけではない。田臥勇太(栃木ブレックス)や新潟アルビレックスBBに移籍して輝きを取り戻した柏木真介、琉球ゴールデンキングスの橋本竜馬や並里成らベテランは巧みな技を見せている。一方、テーブスを含めた若い逸材や、コンバートしたガード陣に必要なのは経験値だけであり、焦る必要はない。国際ルールよりも長い30秒間をかけてじっくりオフェンスを組み立てることができるNCAAではより多くを学ぶことができるため、テーブスの成長速度は速いはず。出場権をつかみ取ることができれば、来年8月のワールドカップのコートに立つポイントガードの顔ぶれは違ってくるかもしれない。

テーブスは次戦(日本時間12月6日、11時ティップオフ)、全米トップ25チームとの初対戦を迎える。マイケル・ジョーダンを始め、多くのNBA選手を輩出してきた本家ノースカロライナ大ターヒールズ(現在ランキング14位)に対し、本気のNCAAレベルを肌で感じることができる。どこまで通用するかが楽しみだ。