河村勇輝

一瞬で観客を魅了した激しいディフェンス

ワールドカップアジア地区予選のWindow6でイランと対戦した男子日本代表は、攻守ともに相手を圧倒し、96-61の快勝を収めた。

最終的に35点差がついたが、序盤は3ポイントシュートの確率が上がらず、ディフェンスも崩されるなど、拮抗した展開が続いた。そして、その膠着状態を打破したのが河村だった。第1クォーター開始5分過ぎ、日本が1点リードの場面でコートに立った河村はファーストプレーでいきなり魅せる。ボールマンに対してピタリと張り付き、軽快なフットワークでコースを先回りし、一人でイランオフェンスを停滞させた。微妙な判定でファウルになったが、このプレーに会場は大きく沸いた。

河村は「審判がファウルと言えばファウルなので、そこはもっとスマートにやらないといけないと思います」と大人な対応を見せつつ、得点面で注目されることが多い中ディフェンスファーストの意識で臨んだことを明かした。「マインドを変えて、しっかりディフェンスからと考えていました。特にポイントガードを自由にさせなければ、イランのオフェンスがうまく機能しないということはスカウティングで分かっていたので。代表戦ではアグレッシブなディフェンスを持ち味にやっていくようにしています」

ディフェンスの意識を高めたという河村だが、彼の活躍はディフェンスだけに留まらなかった。第1クォーターには2本の3ポイントシュートを沈め、高速ドライブでもスコアし、8得点を固めて22-16とリードを広げる立役者となった。日本は第2クォーターを30-13と圧倒したが、このビッグクォーターを生んだのは河村の活躍がきっかけだったと言える。その後も要所で顔を出した河村は16分17秒のプレータイムながら、6本すべてのフィールドゴール(3本の3ポイントシュートを含む)を成功させ15得点を挙げ、出場時の得失点差を示す数値は+19を記録した。

河村勇輝

抜群の連携を見せたホーキンソンは「トムさんのバスケにぴったりな選手」

この試合は新戦力の活躍が目立ったが、代表デビューとなったジョシュ・ホーキンソンは17得点を挙げ、期待通りのパフォーマンスを見せた。河村はそのホーキンソンに何度も絶妙なパスを送っていた。合宿中から「めちゃくちゃやりやすい」と、ホーキンソンとの相性について語っていたが、その言葉が本当だったことを証明した。河村は言う。

「本当に素晴らしい選手だと思いました。ダイブもできればポップもできて、ミスマッチのところでアタックもできる。トム(ホーバス)さんのバスケにぴったりの選手かと。自分がクリエイトして、ジョシュがうまく合わせてダイブとかしてくれているので、判断の部分もすごく合うと思っています」

互いにどんなプレーヤーかは分かっていても、実際にプレーをしていきなり息を合わせることは容易ではない。それでも、2人は抜群のコンビネーションを見せたが、それは合宿中のコミュニケーションが生きている。「自分は英語を学びたいと思っていて、ジョシュは日本語も英語もできるので、英語を教えてもらったりすることもありました。お互いに要求していることを言い合っているので、それでうまくできたんじゃないかと思います」

河村は素晴らしいパフォーマンスで日本を牽引したが、同じポイントガードの富樫勇樹、テーブス海も河村に引けを取らないパフォーマンスを見せた。今後も熾烈な正ポイントガード争いが繰り広げられることが予想されるが、河村はこの競争がそれぞれを高めるきっかけになると信じている。「本当に今のポイントガード3人はすごく良い関係性が築けていて、良いコミュニケーションが取れていると思っています。タイムシェアは大事ですけど、ワールドカップに出るためには切磋琢磨していかないといけないと思っています」

Bリーグでの好調さを代表戦でも示した河村。最年少の枠が外れ、名実ともに日本代表の中心選手になりつつあることを実感させる試合となった。