再建チームのジャズへのトレードが、25歳でのブレイクに繋がる
ラウリ・マルカネンは今シーズン開幕前、ドノバン・ミッチェルのトレードに絡んでジャズへと移籍した。NBAデビューから4シーズンを過ごしたブルズを離れ、キャバリアーズで1年が経過していた。キャブズでは移籍1年目で主力を務めていたが、序列はダリアス・ガーランド、ジャレット・アレン、エバン・モーブリーの下。若い才能が次々と開花するキャブズにおいて、アンタッチャブルな存在ではなかった。
ジャズはルディ・ゴベアとミッチェルを放出して再建に転じたばかり。マルカネンがそのジャズに加入し、半年でオールスターに選ばれるとは、誰も予想できなかったはずだ。
マルカネンはキャリア6年目にして初めてチームのファーストオプションを任され、キャリアベストの24.9得点を記録し、ジャズのシーズン序盤の快進撃における主役となった。NBAオールスターでスターターを務めたのは他にケガ人が出た結果だが、選出自体は『地元枠』ではなく実力で勝ち取ったものだ。
「僕はこれまで楽なキャリアを送ってきたわけじゃない。今の好調は、すべて過去にやってきたことの結果だと思う」とマルカネンは言う。
彼が過ごしたどのチームの関係者も、マルカネンがどれだけ練習に情熱を注いできたかを証言する。スキルを学び、得点するためのありとあらゆる動きを繰り返し、ウェイトルームで身体を強化する。これはデビュー前から彼が常にやってきたことだ。それがベースとなり、今回は2つの要素が彼をブレイクに導いた。
一つはユーロバスケットで自信を取り戻したこと。もう一つはジャズが彼をエースに据えたことだ。昨夏のユーロバスケットでマルカネンはフィンランド代表のエースとして、戦術の中心に据えられて大活躍した。シュート、ドライブ、フィジカルに高さとオフェンス面で様々な武器を持つ彼は、瞬時の判断で相手の嫌がるプレーを選択してディフェンスをこじ開けられる。だがそのためには自由が必要であり、逆に役割を限定されると持ち味は出しづらい。
マルカネンはフィンランド代表で自由に動き回り、高さやスピードのミスマッチを作り出して得点を重ね、自分の作り出したスペースを味方に使わせてアシストも量産した。そしてジャズも、基本的にはこの形を踏襲している。指揮官ウィル・ハーディーはもともとマルカネンと面識を持っていなかったが、トレードが決まった直後、ユーロバスケットの大会期間中に現地は深夜であるにもかかわらず電話を掛けた。そこでマルカネンのプレーがどれだけ好きかを語り、まずは代表チームでベストを尽くせ、という短い会話を交わしたという。ハーディーは代表で活躍するマルカネンのプレーを見ながら、新生ジャズの構想を立てていた。
これまでマルカネンは早熟型の選手と見られており、伸びしろはもうないと見られていた。キャブズが簡単に彼を手放したのも、それが理由だろう。だがハーディーは「彼のピークはこれから来る」と明言している。まだ25歳であり、エースを任されるのは今シーズンが初めて。彼はますます自信を持ってプレーできるだろうし、チームとの連携も今後さらに向上する。7.7アシストを記録していたマイク・コンリーがトレードされたのは不利な状況だが、今のマルカネンはその変化も成長の糧にできるはずだ。
NBAオールスターでのマルカネンは26分のプレーで13得点7リバウンドを記録。最初の得点は昨シーズンまでのジャズのエース、ミッチェルのアシストを受けたアリウープで、地元ファンを大いに沸かせる一発だった。
「NBAオールスターは最高の経験だった」とマルカネンは振り返る。「3ポイントコンテストとオールスターに出るのをずっと楽しみにしていたんだ。素晴らしい選手たちと一緒にプレーできてうれしかったし、自分がジャズを代表してプレーできて良い気分だった」
一つだけ心残りなのは、決まればゲームウィナーだった最後の3ポイントシュートを決められなかったことだ。「一瞬、ダンクに行くか3ポイントシュートを打つかで迷ってしまったんだ。それで打つまでに時間が掛かってリズムを乱してしまった。でも、あのシュートが入っていれば完璧だったけど、僕たちはやり遂げたと思う。みんな競争を楽しんだ。だからあれで良かったのさ」