馬場雄大&田中大貴

文=丸山素行 写真=鈴木栄一

馬場のダンクからリードを守り続けて混戦を制す

男子日本代表は昨日、カザフスタンに86-70で勝利しワールドカップ予選の戦績を6勝4敗としてグループF3位に浮上した。

終盤に突き放したことで点差は離れたが、前半を終えた時点で日本のわずか1点リードと決して簡単な試合ではなかった。特に第1クォーターでは、警戒していたにもかかわらず、8本中5本の3ポイントシュートを沈められ、6点のビハインドを背負った。先発した田中大貴も「前半は相手にたくさんシュートを決められたり、オフェンスリバウンドを取られたり、やられてはいけないところでやられてしまって競った展開になりました」と振り返る。

だが「後半はそこをしっかり修正して、カタール戦と同様に、ディフェンスからオフェンスに良い流れを持って来れたんじゃないかと思います」と田中が言うように、その後はカザフスタンの3ポイントシュートを16本中1本の成功に封じ、この日41得点と大暴れのニック・ファジーカスを強調することで主導権を握った。

それでも日本はファウルトラブルに陥るなどリードを広げるには至らず、第3クォーター残り1分49秒にフリースローを決められ、55-55の同点に追いつかれた。この嫌な空気を払拭したのは馬場雄大だ。直後のリスタートから素早く自ら持ち込み、豪快なダンクを叩き込んで会場を沸かした。結果論だが、それ以降カザフスタンに追い付かれることはなかった。

試合の流れを一変させるインパクト大のプレーだったが、「行けたら行くというスタンスで常にやっているので、ダンクしたからどうこうという感情はあまりなかったですね」と馬場は言ってのけた。「走ること自体がラマス監督が僕に求める役割だと思っているので、その前の過程がすごく大事です」と、馬場からしてみれば、ダンクという結果よりも速い展開から生まれたゴールということが重要だった。

馬場雄大

馬場「状況判断は常にルカコーチに言われています」

日本がカタールに勝利した同日、カザフスタンは92点を奪って格上のフィリピンに勝利した。スコアを見ても、70点に封じたディフェンスが勝因の一つであることは間違いない。ファウルトラブルも手伝い、最終クォーターには富樫勇樹、比江島慎、馬場、田中、ファジーカスというスモールラインナップを敷いた。速さでアウトサイドシュートをケアし、フィジカルと身体能力で高さのミスマッチを解消したことで、想像以上にこのラインナップは機能した。馬場が30分、田中が29分と、2人のプレータイムが伸びたのは、その万能性とディフェンス力に他ならない。

そして2人の共通項はアルバルク東京だ。馬場は言う。「A東京ではディフェンスの部分も常にハードにやっています。(フリオ)ラマスコーチの求めるバスケも、もちろんディフェンスがカギになってくるので、そういうところはできたかなと思います」

「雄大も言いましたけど、自分のチームで求められている激しいディフェンスの部分では、自分が試合に出たときには少なからず貢献できていると思います」と、田中もディフェンス面に自信を見せる。

また自らがボールハンドラーとなり、クリエイトするシーンが何度もあったが、それはA東京での姿と重なる。「ラマス監督のバスケもピック&ロールが発生するということで、アタックもしっかりできました。そこの状況判断は常にBリーグでルカ(パヴィチェヴィッチ)コーチに言われていますし、そういった部分ではアジャストできた」と馬場は言う。田中もBリーグの試合後のコメントで「良い状況判断ができた」という言葉をよく使う。普段のプレーがそのまま代表で体現できていることを意味している。

田中大貴

田中「頭の片隅に次のイラン戦を残しながら」

Windows5が終わり代表は一時解散となる。このまま日本代表のバスケをより高い水準まで突き詰めていってほしいが、選手たちは所属するチームに戻り天皇杯やリーグ戦を戦うことになる。「Bリーグのチームでやっているバスケと代表のバスケは違うので、そこの切り替えは必要」という馬場の言葉はもっともだ。

それでも田中は「なかなか両立してやることは難しいのかもしれないですけど」と前置きをしつつ、「どこか頭の片隅に次のイラン戦を残しながら、そこで自分がまたチームに貢献したり活躍するためには何が必要かということを常に考えながら、日頃の練習に取り組んでいきたい」と先を見据える。

2月21日にイラン、2月24日にカタールと戦い2次予選は終了する。約3カ月弱の間、所属するチームでプレーをしながら代表のバスケを思い描くことは至難の業だが、それでもA東京と代表でのプレースタイルが似ている2人には、その高難度の課題にも挑戦してもらいたい。