琉球の岸本「勝ちましたが、河村君にやられたという印象しか残っていないです」

2月15日、天皇杯セミファイナルが行われ横浜ビー・コルセアーズはアウェーに乗り込んで琉球ゴールデンキングスと対戦。立ち上がりからリードを許し、第2クォーター中盤に最大18点の大量ビハインドを背負う劣勢の中、第4クォーター途中には1点差にまで肉薄する追い上げを見せたが、あと一歩及ばず91-96で敗れた。

負けたとはいえ、この試合の主役は間違いなく横浜BCのエースである河村勇輝だった。序盤から次々とシュートを決め続け、3ポイントシュート9本成功を含む45得点7アシスト4リバウンド2スティールと圧巻のパフォーマンスを披露。8500人を超える超満員の沖縄アリーナの観客をその圧倒的なプレーで沸かせ続けた。

琉球の河村に対するディフェンスは、「トラップを仕掛けたところですぐにボールを離されて、こちらが3対4の状況にされるのは嫌でした」と言う桶谷大ヘッドコーチの考えから基本は1対1で守り、抜かれたら他の選手がカバーしていた。河村になんとしてもボールを持たせないための特別な対策を取ることはなかったが、それでもしっかりとチームで守ることはできていた。だからこそ、桶谷ヘッドコーチはこのように河村を称える。「本当に彼へのマークが外れて決められたシュートは2回くらいしかないです。それ以外は、しっかりとシュートチェックができていて、タフなシュートを打たせていたと思います」

リーグ屈指の強度を誇る琉球の堅守を打ち破った河村のハイパフォーマンスには、琉球の岸本隆一も「試合に勝ちましたが、河村君にやられたという印象しか残っていないです」と脱帽している。

「チームメートが自己犠牲を払って僕をフリーにしてくれて成り立っている点数」

また、この日の河村はこれだけのシュートを決め続けていた中でも、7アシストが示すように、味方がフリーになれば見逃さずにパスを通してイージーシュートの機会を作り出すチームファーストの姿勢も持ち続け、琉球を翻弄していた。文字通り試合を支配した河村だったが、「こういう点数を取れたのはうれしいですが、負けは負けです。天皇杯は一発勝負で負けたら意味がない試合で、それがプロの厳しい世界だと思います。」と悔しさしかない。

「やはり第1クォーターの入りで、琉球さんがすごく強いスタートをしたのに対して、自分たちがその強度に合わせることができず18-29となり、そこが最後に繋がってしまいました。ビーコルは若手が多く、チームとしてもずっと勝ててない状況に比べ、琉球さんはいろいろとハイレベルな試合を経験されています。盛り返す時間帯はありましたが、最初に飲まれてしまったのは経験の差も感じました」

このように試合を振り返る河村は、自身のパフォーマンスについても反省点はあったと続ける。「『あのポゼッションでああいう風にしておけば良かった』というところはもちろんあります。勝てなかったというのは、何かが足りなかったということでしかないです。ディフェンス、ターンオーバー、ゲームの流れを読む部分、第1クォーターにガードとしてチームメートをコントロールできなったことなど、いろいろと課題はあります」

そして、得点の45という数字がクローズアップされることに対し、河村は自分の力だけで取ったものではないことを何よりも強調する。「45得点は自分中心のプレーだったり、フォーメーションがあってこそのもの。それをコーチングスタッフが選択し、チームメートがいろいろな自己犠牲を払って僕をフリーにしてくれて成り立っている点数で、一人で取った点数ではないです。すべてのチームメートの理解があってのプレーなのでそこは感謝しています」

さらに、「横浜は点の取り合いで勝てるチームではないです。ロースコアに抑えて勝つのがゲームプランです」としっかりと足下を見つめている。「チームとしては、勝ち方をもっと熟知して戦う必要があります。96失点で勝てても自分たちの自信に繋がらない。ディフェンスの強度をもっと上げていかないといけないです」

どんな内容であったとしても、河村が語るように負けは負けだ。しかし、試合後の河村のコメントは、この敗戦が河村と横浜BCにとってさらなる成長の糧になると感じさせてくれるものだった。河村を中心に横浜BCはまだまだ強くなれる。その大きな伸び代を感じる試合だった。