スタッツには表れない活躍「コーチ・ポップの下で成長できた」
ラプターズは思うような結果が出ていないにもかかわらず、フレッド・バンブリートとOG・アヌノビーというスター選手をトレードデッドラインで放出することなく、現体制で今シーズンを戦い抜くことを決めた。それでも、スパーズからヤコブ・パートルを獲得したことは、大きな補強になるかもしれない。
現地2月10日のジャズ戦で初出場した彼は、2日後のピストンズ戦では先発センターとして登場した。25分の出場で6得点5リバウンドとスタッツは平凡だが、2スティールに3ブロックを記録し、コートにいる間の得失点差はチームで最も良い+11を記録。2分半を残して個人6つ目のファウルで退場となったが、その時点でラプターズは11点リードと勝利に貢献している。
「攻めのディフェンスをするチームだから、時にファウルを取られるのは仕方ない。それより自分たちの原則を貫くことが大事だと思ってプレーして、ファウルトラブルだからと消極的になることはなかった。良い感覚は得られているから、試合を重ねるごとに良くなっていくはずだ」とパートルは手応えを語る。
スパーズではピック&ロールに対して引いて守るのが基本だったが、ラプターズではより激しくボールにプレッシャーを掛ける守備が『原則』となる。「ここ数年はやっていないけど、このスタイルは理解している」と、ルーキーイヤーから2年間をラプターズで過ごした彼は言う。当時の指揮官はドウェイン・ケーシーだったが、そこでアシスタントコーチを務めていたニック・ナースのことは理解していて、難解なバスケではあるが順応にさほど苦労はしなさそうだ。
ナースは個人的な事情でチームを離れており、アヌノビーも手首のケガで欠場しているが、パートルはそれを感じさせないほどのインパクトをもたらしている。
リムプロテクターとしての優秀さは言うまでもなく、オフェンス面でもポストアップからプレーメークに参加し、スクリーンはバンブリートが「攻めるコースを簡単に作り出せる」と称賛するもの。スタッツには表れない形で、加入早々から攻守に貢献している。
そしてパートルは、シーズン途中の慌ただしい移籍について「噂はたくさんあったし、実際に複数のクラブが僕に興味を持っていたようだけど、具体的なことは聞いていなかった。だから数日間はモヤモヤした気分だったよ。良い結果になってホッとしている」と語る。
「サンアントニオの環境は大好きだったから、トレードが決まった時には残念な気持ちもあった。でも今シーズンは負けてばかりだったし、勝利を目指してプレーしたかった。パスカル(シアカム)やフレッド、OGとまた一緒に戦えることにワクワクしたよ」
「スパーズではコーチ・ポップ(グレッグ・ポポビッチ)の下で大きく成長できたと思う。スキルも向上したけど、試合を読んでペースをコントロールし、チームメートのためにプレーすることを覚えたこと。エクストラパスで最高のシュートチャンスを作り出すのが僕は好きだし、パスカルやスコッティ(バーンズ)がゴール下に入って来る時には、正しい間合いを見付けてスペースを作る。僕がシュートを打たなくても、相手ディフェンスを苦しめることはできる」
「コートを広く使ってボールを左右に振るようなオフェンスは、僕がいた時代から継承されていると思う。僕もキャリアを重ねて経験を積んだから、もっと細かいところまで理解してプレーに加わることができるはずだ」
バートルはスパーズに来て2年が経過した2020年に結んだ3年2700万ドル(約35億円)の契約の最終年を迎えている。彼の個人的な目標は、この数カ月でラプターズでの信頼を勝ち取り、契約延長を結ぶことだ。「クラブ側は長期的なプランとして僕を獲得したものだと思う。ただ、契約のことは切り離して、試合に勝ってプレーオフ圏内に行くこと、そのためにこのチームを理解することに集中したい」