「最高のベンチプレーヤーになりたい」
ティンバーウルブズで初のフルシーズンを送っているデリック・ローズは、しばらくぶりにバスケットボールを楽しみながらプレーしている。
2008年のドラフト全体1位で地元シカゴに本拠地を置くブルズから指名され、2011年にはNBA史上最年少(22歳と6ヶ月)でシーズンMVPを受賞する順風満帆のキャリアを送っていたが、2012年のプレーオフで左ひざ前十字靭帯を断裂する重傷を負ってからは、ケガとの闘いだった。
暗闇の中を彷徨い続けたローズは、それからニックス、キャバリアーズを経て昨シーズン後半にウルブズと契約。ブルズ時代の恩師トム・シボドーの下、ウルブズでは主にシックスマンとして起用されている。『ローズは終わった』という批判は、今に始まったわけではない。だが今シーズンの彼は、近年でベストと呼べるパフォーマンスを続け、不死鳥の如く完全復活を遂げようとしている。
10月31日のジャズ戦では、キャリアハイとなる50得点を記録し、人目を憚らずコート上で涙した。今シーズンは20試合で平均19.0得点、3.3リバウンド、4.4アシスト、フィールドゴール成功率49.8%を記録している他、3ポイントシュート成功率に至ってはリーグ4位の48.6%という高確率をマーク。今シーズン開幕前の時点でキャリア成功率29.6%だった苦手なアウトサイドシュートを、猛練習の末に克服し、シューターとしての才能が開花しつつある。そのローズは、現在の心境を『Star Tribune』にこう語った。
「最近では今が一番楽しい。シカゴ時代とは違って、メディアのことを気にせずやれているし、フロントオフィスとの対応、その他の問題への対応も気にせずにやれている。今は何の不安もなく、試合のことだけに集中できている。こうあるべきだよね」
またローズは、今シーズンの目標に、シックスマン賞の受賞も挙げた。「シックスマン賞を受賞したい。口に出してはいけない目標ではないだろうし、ベンチからプレーしている自分にとって悪い目標でもない。最高のベンチプレーヤーになりたいんだ。今は、そう感じている。チームの力になれるのなら、何でもやりたい」
シーズンMVPを受賞したほどの選手ならば、自らベンチ起用を受け入れることも簡単ではないはず。だがローズは役割の違いに不満を漏らすのではなく、今のポジションで最高の選手になりたいとまで言ってのけた。それもこれも、どん底を経験したからなのだろう。ローズのコメントからは、心底バスケットボールが大好きなことが伝わってくる。
シカゴの顔としてガムシャラにブルズを引っ張った時期と比べて、プレーも円熟味を増した。故障歴を考えれば楽観はできないものの、このまま大きなケガなくシーズンを送れれば、7年ぶりのオールスター選出、そして、キャリア初のシックスマン賞も、見えてくるのではないだろうか。