ニック・ファジーカス

文・写真=鈴木栄一

19得点10リバウンドも「素晴らしいプレーではない」

川崎ブレイブサンダースのエースとして、優勝候補のチームを引っ張る役割を引き受けるニック・ファジーカス。日本国籍を取得したことで『日本の大黒柱』の期待も寄せられることになった。9月のWindow4では足首の手術をしたため欠場したが、ここはアイラ・ブラウンが代役を務め、渡邊雄太と八村塁の揃い踏みもあって連勝。そして今回、ファジーカスは代表に戻って来た。

カタール戦の勝利から一夜明けた昨日、ファジーカスは「勝って少し安堵した気持ちはある。みんなから僕がチームを引っ張る存在と見られていることにプレッシャーもあった」と明かす。

そんな重圧の中でも19得点、10リバウンド3アシスト3スティールと結果は残している。ただ、本人からすれば「昨日の試合は、素晴らしいプレーというわけではなかった」とのこと。見事な出だしだった第1クォーターに比べると、第2クォーター以降のインパクトが弱まった要因を次のように見ている。

「第2クォーター、相手のゾーンディフェンスに対してうまく対応できなかったところはある。周囲に複数の相手がいて、ボールを触る回数が減った。チームとしてもアウトサイドからのシュートが多くなって、イージーシュートが打てなかった。後半は、より流れの中から良いリズムで攻めることができた。ただ、僕のジャンプシュートは調子が良くなく、少し苦労したところはある。月曜日は、もっとシュートタッチが良くなってほしい」

ニック・ファジーカス

「代表でも川崎でも、すべては勝利のために」

数字だけ見れば、19得点はファジーカスにとっては少ない部類に入る。ただ、「Bリーグを見ている人は、『ニック、今日は30点取れなかったけど、どうしたんだ?』と思うかもしれない。それが周囲の期待であることは分かっているけど、毎試合そんなに点数が取れるわけでないからね」と、本人はファンの気持ちも理解した上で、冷静さを失わず次の試合への準備を進める。

「もちろん良いプレーをしたいし、それは多くの得点、リバウンドを記録することも意味している」と語るものの、川崎ブレイブサンダースでのプレーと同じく、日本代表でもあくまで重視しているのは試合に勝つことだ。「代表でも川崎でも、すべては勝利のために。ここ一番の重要な局面で得点を決めて、リバウンドを取る。こうしてチームの勝利に貢献していきたい。自分が何本シュートを打つかは関係ない」

だからこそ、彼は代表においても『スコアラー』というより、次のような存在になりたいと言う。「僕はリーダーになりたい。みんなには、常に全力を出し尽くす選手。代表に勝利をもたらし、東京オリンピックに導いてくれる選手として見られたいんだ」

次戦の相手、カザフスタンについては「フィリピン戦を見たけど、彼らはタフな相手だ。失うものがなく、ハードにプレーしてくる。また、彼らも予選突破のチャンスがある。前回はアウェーでカザフスタンに勝っているけど、彼らに敬意を持って対峙しないといけない」と気を引き締めている。

カザフスタン戦でも相手がまずはファジーカスを徹底マークしてくることは十分に予想できる。だが、それは彼にとっても想定内のこと。『スコアラー』の働きはもちろんだが、それ以上にチームに勝利をもたらす『リーダー』としての本領を発揮してくれることを楽しみにしたい。