安藤周人

同点にされた直後の安藤の連続得点が勝負の分かれ目に

アルバルク東京が2月4日、ホームに大阪エヴェッサを迎えた一戦。最後まで集中力を切らさなかったディフェンスと、フリースローの獲得本数で27-8と大きく上回ったようにゴール下の攻防で優位に立ったことが勝因となり、74-66で競り勝って9連勝を達成した。

A東京は試合の出だしから、大阪のエースであるディージェイ・ニュービルに対し吉井裕鷹が密着マークで自由にプレーさせないなどチーム全体で激しいディフェンスを続け大阪にタフショットを打たせ続けた。その結果、トランジションも機能しイージーシュートに繋げることで21-6と申し分のないスタートを切る。だが、プレッシャーに慣れた大阪に徐々にアジャストされてしまう。ガードの崩しからビッグマンにインサイドで決められる場面が増え、ハーフコートオフェンスも停滞し、39-35と追い上げられて前半を終えた。

後半に入っても大阪の流れは続き、A東京は第3クォーター早々に鈴木達也の3ポイントシュートを受けて同点に追いつかれてしまう。だが、直後に安藤周人がドライブ、3ポイントシュートによる連続得点を挙げて悪い流れを払拭し、主導権を奪い返した。第4クォーターに入って大阪の粘りに遭ったものの、要所で小酒部泰暉のバスケット・カウント、ライアン・ロシターのティップインによる得点など、タフショットを決め切ったことでリードをキープし、隙のない試合運びで逃げ切った。

安藤は3ポイントシュート6本中3本成功を含む15得点に2リバウンド2アシストを記録。この9連勝中、すべての試合で2桁得点を挙げているエースシューターはこう試合を振り返った。「前半に10点、15点とリードを広げ、あのままいけば楽な試合になるはずでした。でも第2クォーターにやられていけないことを連続でやられてしまいました。点数を離しても、そこからさらに離し切れないのが今のチームの課題だと思います。その中でも第3クォーターに入ってやっとディフェンスのギアを上げて、失点を防いだのが今日の勝因だと思います」

このように安藤は勝った中でも内容については全く満足していない。「試合の最初にできたことを続けないといけないです。今日みたいにハーフタイムで追い上げられてしまったのは反省ですし、自分たちの気の緩みが浮き彫りになった試合だと思います」

安藤周人

久しぶりの参加となる代表合宿への思い「やっとつかみ取ったモノ」

要所でのビッグショットを含め、第3クォーターで10得点と爆発した自身のプレーについては、このように振り返った。「前半は自分自身あまりよくなかったので、このままズルズル行ったらダメだとハーフタイムで気持ちを切り替えました。そして、チームに喝を入れる意味を込めて自分で積極的に点を取りに行った結果が今日の良い形に繋がってくれました。明日は出だしから自分がチームを引っ張っていきたいと思います」

大黒柱の田中大貴がインジュアリーリスト入りする中、A東京の得点源として安定のハイパフォーマンスを続けている安藤は、その活躍ぶりが評価されワールドカップ予選Window6に向けた強化合宿メンバーに召集された。トム・ホーバス体制では発足直後の2021年11月に行われたWindow1直前合宿以来のメンバー入りについて率直に「うれしいです」と語る。

「11月の最初に呼ばれてからチャンスがなかったので、やっとつかみ取ったモノです。まだまだ反省点は多いですが、1月の自分のパフォーマンスは良くて、それで呼んでもらえた、トムさんの求めているものが自分にハマったんだと思います。合宿は気負うことなく、自分のパフォーマンスをしっかり見てもらえるように頑張りたいです」

1年以上ぶりとなる代表合宿への参加となるが、A東京が故障者続出という状況もあり「あまり代表を気にする余裕がなかったです。チームにフォーカスしないといけない思いでした」と、代表復帰を特に意識することはなかったという。ただ、メンバー入りした4年前のワールドカップは「出場させてもらいましたが、自分自身で納得できるものではなかったです」と消化不良の思いは強く、前回の雪辱を果たすためにも本大会出場への意識は高い。

前回の合宿参加と今の安藤では大きな変化がある。それは中心選手としてチームを背負う覚悟だ。「最後に試合を決めるのは自分、という気持ちで今はやっていて自信はかなりつきました」と安藤は力強く語ったが、田中の戦線離脱が転機になったという。「きっかけは大貴さんのケガです。インジュアリーリストに入る前から腰の状態が良くないと聞いていて、リストに入った後から自分がやらないといけないという気持ちが強くなりました。今まで大貴さんに頼っていた部分は大きくて、帰ってきた時に負担を減らすためにも自分が1つレベルを上げないといけないと思っています」

今の安藤は大学時代から定評のある非凡なシュート力を存分に発揮するための精神的なたくましさを十分に身につけている。心技体が揃った彼なら、代表のポジション争いに新たな刺激を与えてくれるはずだ。