張本天傑

文=丸山素行 写真=鈴木栄一

指揮官ラマスも「スペシャル」と称賛する働き

11月30日、バスケットボール男子日本代表はカタール代表を85-47で破り、ワールドカップアジア予選における連勝を5に伸ばした。

前半を1点ビハインドで終えた日本だったが、後半で54-15と圧倒。「前半のディフェンスは普通に良かった」と指揮官のフリオ・ラマスがコメントしたように、ディフェンスは総じて悪くなかったが、多くのタフショットを決められリズムに乗れなかった。それでも「後半はすべてが変わりました。ディフェンスはとても素晴らしくアグレッシブに行けました」との指揮官の言葉通りに、後半はディフェンスの強度が一段階上がり、ここから逆転劇を生み出した。

その堅守構築に一役買ったのが張本天傑だ。198cmとサイズでは劣るものの、フィジカルで負けることなく、ボールを入れられる前のポジショニングや機動力を生かしたディナイなどでカタールのオフェンスを停滞させた。

ラマスコーチも馬場雄大、竹内譲次とともに張本の名前を挙げて「特にこの3人はスペシャルでした」と称賛している。

その張本は「後半にしっかり切り替えて相手の得点を15点に抑えたので、良いバスケットができたと思います」と試合を振り返った。またラマスコーチが称賛したように、3番と4番を兼任できる高さと敏捷性を兼ねたディフェンス力については、「今シーズンから3番をやり始めて、その効果があったんじゃないのかな」と胸を張った。

張本天傑

訪れたチャンスをモノにし「ホッとしています」

3ポイントシュートを含む8得点に加え、6リバウンド1ブロックとインサイドでの強さも見せ、『ストレッチ4』としての張本の魅力が存分に見れた一戦となった。

最近の張本は渡邊雄太や八村塁のスペシャルな働きの割を食う形で、出場機会はほとんど与えられなかった。そうした経緯もあり張本も「せいぜい5分とか10分くらいじゃないかと自分では思っていた」と繋ぎ役での起用を予想していたという。だが蓋を開けてみれば、圧倒した後半の立役者となり、20分弱のプレータイムを与えられた。張本も「後半ずっと出ずっぱりになるとは正直思ってなかったです」と予想外の起用に笑みをこぼした。

ただこの笑顔は、これまでの苦労が報われた安心感からこぼれたものだ。「練習から頑張ってますが、あまり試合に出してもらえていなかったので。でもラマスコーチにはずっとメンバーに入れてもらって、こうして20分近くプレータイムをもらってホッとしています。モチベーションにもなりました」

また所属する名古屋ダイヤモンドドルフィンズで不動の先発だった張本だが、今シーズンはスタートを外れ、プレータイムも微減している。ようやく本来のポテンシャルを発揮し、自チームへのアピールにもなり、「やっと出たぞっていう安心感もある」と素直な心情を吐露した。

もっとも、このカタール戦での単発になっては意味がない。今後も力強さと機敏さのバランスの取れたパフォーマンスを継続させ、信頼を確固たるものとしなければならない。それができれば自ずとプレータイムも伸びるだろう。それを証明する機会は2日後に迫っている。

「ワールドカップ出場に向けて1試合も負けられないので、日本らしいバスケットをして全力で勝ち取りたいと思います」と張本はカザフスタン戦へ意気込んだ。

日本の勝利とともに、指揮官の信頼も勝ち取れるか。張本の出番を待ちたい。