文=鈴木栄一 写真=鈴木栄一、古後登志夫

沖縄の『目の肥えた』バスケファンをうならせるプレー

12月10日と11日、栃木ブレックスは琉球ゴールデンキングスとのアウェーゲームに80-69、78-71で連勝。この2試合において栃木はライアン・ロシター(10日は31得点23リバウンド、11日は12得点17リバウンド)を筆頭とするビッグマンが制空権を支配し、リバウンド争いで大きく上回ったことが大きな勝因となった。

それ以上に、要所で得点を挙げて試合に大きなインパクトを与えたのが田臥勇太だった。

10日の試合、田臥は14得点4アシストに3スティールをマーク。そして圧巻だったのは11日の試合、フィールドゴール12本中9本を成功させシーズンハイの22得点を挙げたことで、ヘッドコーチのトーマス・ウィスマンも「本当に素晴らしかった」と絶賛のパフォーマンスだった。

そして「ゲームに与えるインパクトが数字以上に大きい。ここぞという時のゲーム感はさすがで、バスケットボールIQがとても高い選手です」(伊佐勉ヘッドコーチ)、「点数を取られたこと以上にゲームを作らせてしまった。悔しいですが、ポイントガードとしての差を感じました」(岸本隆一)と相手チームも脱帽だった。

リーグ随一のチケット売り上げを誇る琉球であるが、今回の栃木戦はチーム史上初の『即日完売』となった。初めて沖縄に来る田臥の存在が試合への期待を大きく後押ししたのは間違いない。試合前の選手紹介で彼の名前がコールされた時の拍手、歓声はアウェーチームの選手に対するものとは思えない大きさだった。

その期待に応えるがごとくこの2日間、田臥は高確率のシュート、安定のゲームメーク、鋭い読みのディフェンスに、ノールックパスなどの『魅せるプレー』も披露し、目の肥えたバスケファンが多く詰めかける沖縄の会場を沸かせた。

沖縄で試合ができたことは、僕たちにとってもありがたいこと

そして田臥も観客と同じく沖縄でのプレーを楽しんたようだ。「今回、沖縄での試合は初めてでしたが、楽しみにしていた甲斐がありました。会場の雰囲気はさすがだと思いました。熱気があり、敵チームではありますがプレーしていて楽しかったです。沖縄に行かないと自分のプレー、そして栃木のプレーを見てもらえないです。沖縄で試合ができたことは、僕たちにとってもありがたいことでした」

意外にもシーズン開幕から17試合連続で一桁得点が続いていた田臥だが、12月に入るとここ4試合は14得点、14得点、14得点、22得点をマーク。さらに4試合における合計のシュート成功率は61%と、得点圏での貢献が目立っている。ただ本人は「得点は気にしていないです。チームが勝つために必要なことをその都度、考えている。勝つためにやるべきことを続けたいと思います」と、特に意識することはない。

それは、この2日間における試合後の総括コメントからもうかがい知ることができる。「1本のディフェンス、リバウンドに集中してやり切ろうと言い続けました。1本でも多く相手のやりたいプレーをやらせない。オフェンスよりもディフェンスで頑張ったことが勝利につながったと思います」(10日の試合後)

「まずはしっかりとしたディフェンスで抑えることができました。琉球は非常にオフェンス能力が高く、勢いに乗せると怖いチーム。リバウンドで相手を上回ったことが勝利につながったと思います」(11日の試合後)

とはいえ、日本代表の古川孝敏が故障欠場していた栃木にとって、田臥がかなりの高確率でシュートを沈めて得点増となることは大きなプラス材料だ。シーズン開幕から3カ月が経過し、徐々に疲労が出てきてもおかしくない時期、調子をどんどん上げている田臥はまさに今リーグで最も見逃せない選手の一人だ。