「緩い時間帯はどうしてもありますが、それを変えたかった」
『ドットエスティB.LEAGUE ALL-STAR GAME2023 IN MITO』の前日記者会見で、篠山竜青は『入場に120%』を公約に掲げた。そして迎えた本番当日、篠山は水戸黄門に扮し、神輿で担ぎ上げられるパフォーマンスで観客の度肝を抜き、さらには衣装の下に『SLUM DUNK』のユニフォームを着るという隠し玉まで用意して公約を果たした。そして「MVPは勝利チームから選ばれるべき」という真っ当な主張がかえって好感を呼び、オールスターMVPまで受賞した。
「3年ぶりのオールスターゲームで少し歓声も緩和されて、久しぶりの舞台を楽しむことができて良かったです」と、篠山自身も球宴を全力で楽しんだが、彼がオールスターにもたらしたポジティブな影響は入場だけではない。
普段は敵同士の選手がチームメートとして手を組み、華麗な連携プレーを披露するオールスターゲームは魅力的だが、試合の強度は否応なく下がる。そして、ディフェンス側も空気を読み、あえて抜かれて派手なプレーをアシストするが、そういった忖度は試合の面白さを半減させる側面もある。その中で篠山は河村勇輝とともに富樫勇樹へダブルチームを仕掛けてボールを奪い、ディフェンス面でも会場を沸かせた。また、試合終盤にはファウルゲームを仕掛けて勝ちに行くなど、『真剣勝負』のテイストを注入した。篠山は言う。
「シーズン中のタフなスケジュールの中でやっているので、もちろん安全第一ですけど、中だるみだったり、40分の中で緩い時間帯はどうしてもあります。そういうのをちょっとでも変えていきたいと思っていました。その中でお客さんが楽しんでもらえるようなものを考えていて、今回の『B.BLACK』はポイントガードも多かったし、ディフェンスができる選手が揃っていたので、そういうところで出だしに迫力を見せられたらいいなと思ってやりました」
NBAでは最初の3クォーターをクォーターごとで勝敗をつけ、最終クォーターは時間制限がなくなり、目標スコアを目指して戦う『ファイナルターゲットスコア』が2020年のオールスターから導入された。これはケガのリスクを抑えながらも、オールスターのエンターテインメント性を高めるための工夫で、選手たちもラスト数分間は強度を上げ、真剣勝負を楽しむようになった。
篠山が背中で見せたことで、本気のディフェンスで試合を盛り上げる選手も多々見られた。篠山もこのポジティブな変化を実感している。「中止になる前に比べて、インテンシティのところも少しずつ上がってきました。オールスターゲームの全体的な質がちょっとずつ成長しているんじゃないかと思いました」
来年のオールスターは沖縄で開催されることがすでに決まっている。今回、水戸にちなんで水戸黄門をチョイスした篠山だが、まだ沖縄でのアイディアは浮かんでおらず「富樫から、きれいにMVPを取って引退なんじゃないかって言われたので、その進退も含めて熟考したい」と先を見据えた。コート内外で今回のオールスターを盛り上げた篠山を、沖縄の地で見たいと思っているファンは多いはずだ。
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