文=大島和人 写真=B.LEAGUE

ベンドラメ、大塚とベンチメンバーがオフェンスを活性化

大阪エヴェッサの桶谷大ヘッドコーチは、試合の総括を求められるとこう語り始めた。「本当に申し訳ないです。恥ずかしいゲームをしてしまった。リッチー(リチャード・ロビー)が入ったファーストゲームで、色んな人がリッチーを(大阪に)入れるために動いてくれて、お金を集めてくれているのに、こんなゲームをして恥ずかしい」

大阪はロビーとの契約が12月9日に発表され、今日が初戦。彼はbjリーグの秋田で3シーズンの実績があるフォワードだ。今シーズンも三遠と契約しプレータイムは得ていたもののジョシュ・チルドレスの加入を前に解約解除となっていた。

桶谷ヘッドコーチが「今までスピードのある選手、ボールハンドラーがいなかった。彼にはペイントへアタックしてからレイアップ、クリエイトプレーをやってほしい」と期待する新戦力を加えた初戦は、第1クォーターから点差を付けられ、一つのクォーターも取れない惨敗に終わってしまった。

サンロッカーズ渋谷にとって勝利の立役者になったのは、ベンチスタートだった選手たち。第1クォーターの残り6分30秒にベンドラメ礼生が入ると立て続けにアシストとスティールを決めてチームを勢いづかせる。同じくベンチスタートの大塚裕土が3ポイントシュートで、その後はアイラ・ブラウン、ベンドラメもシュートを決め、一気に点差を拡げた。

第1クォーター終了直前にはロビーがコートを一人で縦断するドライブからレイアップを決めて大阪も食い下がるも、24-12のダブルスコアで渋谷がスタートの10分を制した。

そして今シーズンから渋谷入りした188cmのシューター大塚が第2クォーターだけで4本中3本の3ポイントシュートを含む11得点を挙げる。「遠くから打った時に入ったので、そこで自分の中でスイッチが入った。ボールを持った時に入る感じはありました」という、彼の時間だった。

渋谷は外国籍選手のオン・ザ・コートを「1-2-1-2」と申告してこの試合に臨んでいた。しかし2クォーターの残り5分9秒にアールティー・グインを下げて満原優樹を入れると、帰化選手のアイラ・ブラウンがいたとはいえ、ハーフタイムまで外国籍ビッグマンを起用せずオン・ザ・コート「0」を続けた。

「相手とこちらの選手の調子によって、起用法は色々変えていきたい。オン・ザ・コート2の時間帯だからというこだわりはない。満原のディフェンスはすごくいいですし、短い時間にはなるけれど外国籍選手にしっかり付ける」

BTテーブスヘッドコーチも説明するように、満原が「オン・ザ・コート1」だった大阪のエグゼビア・ギブソン、ジョシュ・ハレルソンによく対応したことで渋谷は20点以上の点差をしっかり守り、52-30でハーフタイムを迎える。試合の趨勢は、この時点でほぼ決まっていた。

フリースローを巡る、理不尽なジャッジミス

第3クォーターに入ると残念な事件が起こった。残り42秒で渋谷にフリースロー2ショットが与えられ、グインまず1投目を決める。しかし「違う」との指摘が大阪のベンチから飛び、審判がビデオで確認。するとファウルを受けていた選手はグインでなくブラウンだったことが判明する。得点は取り消しとなり、しかも渋谷のペナルティとして大阪ボールでの再開となった。

テーブスヘッドコーチはこう説明する。「まず相手のファウルがありました。自分たちの選手がフリースローラインに立って、レフェリーが3人いる中で彼らがまずアールティー(グイン)にボールを渡したんです。彼がシュートを打つべき選手という意識の下で、ボールを渡しました。そして1本目が入りました。そこでようやく彼らが異変に気付いてビデオを見直して、正しいコールをしました。流れとしてはそうだったんですけれど、ペナルティがこちらに課せられ、得点がなくなり、しかも向こうボールになってしまった」

大阪のベンチから指摘の声を挙げた木下博之はこう振り返る。「レフェリーが完全に間違っていたのに、それを流そうとしていたので、それはちょっと違うんじゃないかなと言いました。3人レフェリーがいて間違うわけはないと僕は思うんですけど……。お互いにとって気持ちが良くない」

渋谷は理不尽な形からポイントを奪われてしまったが、試合の大勢には影響しなかった。試合を通した彼らの勝因を挙げるなら、それはディフェンスだろう。渋谷は4つのクォーターすべてで大阪を10点台に封じた。

2桁得点のなかった大塚がゲームハイ24得点の大暴れ

テーブスヘッドコーチは試合前のミーティングをこう振り返る。「普段のゲームはホワイトボードの半分がオフェンス、半分がディフェンスという具合に書きますが、今日はディフェンスの内容ばかりだった。選手もそれを踏まえて最初からゲームに入ってくれたと思います」

渋谷は大阪の得点源であるギブソン、ハレルソンに対してもアウトサイドの選手が的確なヘルプに入り、ペイントの中で気持ち良くプレーさせなかった。2ポイントショットを10分の8という高い成功率で沈めてギブソンには24ポイントを決められたが、ディフェンスのテコ入れに成功。第2クォーターには大阪から2度のショットクロック(24秒ルール)バイオレーションを奪い、試合を通してターンオーバーからのシュートを13本決めた。

渋谷の大塚は1試合で合計6本のスリーポイントを成功。Bリーグが開幕してからまだ2桁得点すらなかった脇役が、24得点の派手な活躍を見せた。大塚は昨シーズンまで秋田ノーザンハピネッツに所属しており、大阪の桶谷ヘッドコーチが岩手の指揮を執っていた時は同地区で対戦回数も多かった。だからこそ価値の大きい、本人も「対策を練られた状況でシュートを決められたことは自信になった」と胸を張る大活躍だった。

渋谷が91-66と快勝し、ホームアリーナを守った。テーブスヘッドコーチが「ウチの外国籍選手がもう少しオフェンス面で貢献してくれたらなという懸念がある」と口にするように、グインとチャド・ポスチュマスが合わせて19ポイントという物足りなさはある。とはいえ渋谷にとっては前節、千葉戦の連敗から立て直し、しっかり成果を出した大阪との初戦だった。

大阪での初戦となったロビーだが、先週に合流していたものの手続きやメディカルチェックなどがあり、全体練習に合流してからまだ3日ほど。コンディションや連携面の難は否めず、この日の出場も10分強にとどまり、2得点3リバウンドという平凡な記録に終わった。