超ロングブザービーターを含む、第3クォーターだけで14得点の大爆発
琉球ゴールデンキングスは2023年の元旦にホームでアルバルク東京と対戦。7,500人を超える観客が集まる中、インサイドアタックと3ポイントシュートによるバランスの取れたオフェンスでA東京の堅守を攻略し、82-71で勝利を収めた、これで前日に敗れた雪辱を果たした琉球は、A東京ともに今シーズンの戦績を20勝6敗としている。
出だしはともに強度の高いディフェンスに苦しむが、琉球はジャック・クーリーがゴール下でタフな体勢からシュートをねじ込むなど決定力で上回り17-7と先手を取る。第2クォーターに入ると序盤は膠着状態となるが、中盤にかけて岸本隆一の連続3ポイントシュート、前からの激しいプレッシャーで8秒バイオレーションを奪うなど、攻守で会場を沸かせるビッグプレーが飛び出し、残り約5分でリードを15点にまで広げる。だが、ここからパスミスなど拙攻が続くと、31-23と終盤に点差を縮められてハーフタイムを迎えた。
嫌な流れで後半に入った琉球だが、第3クォーター開始直後に岸本、今村佳太が連続3ポイントシュートと再び効果的に長距離砲を決めて、一気に流れを引き寄せる。A東京も確率良くシュート決め続け前半とは真逆の点の取り合いとなるが、琉球はエースの今村が持ち前の爆発力を発揮することで主導権を渡さない。今村は敵陣から放った超ロングシュートでのブザービーターを沈めるなど、このクォーターだけで14得点を挙げ琉球が61-47と突き放した。
第4クォーターに入っても琉球は今村がドライブして守備を切り崩すと、30得点を挙げたクーリーが決めるホットラインを軸に引き続き試合を優位に進める。だが、A東京の強烈なプレッシャーから徐々にボールムーブが停滞すると、外からの単発シュートが続いてリズムを崩した。残り3分で6点差にまで追い上げられてしまうが、この苦境をクーリーのインサイドアタックで切り抜けて、ここ一番で身体を張ったタフなディフェンスで踏ん張って逃げ切った。
14得点7アシスト4リバウンドで勝利の立役者となった琉球の今村は、ファウルトラブルもあって無得点に終わった前半の鬱憤を晴らすかのような第3クォーターの爆発をこう振り返る。
「前半は良い形でボールムーブができていて、僕以外のところでクリエイトしながら得点を取れていました。ただ、試合が進んでいく中で、自分のところで相手の心を折るようなプレーをできたらと思っていて、それがアグレッシブなプレーに繋がりました。こういう姿勢は大事にしていきたいですし、続けていきたいです」
また、第4クォーターでの4アシストなど攻撃の起点としても見事なプレーだったが、アシストは決めたチームメートのおかげと強調する。「良い感覚でバスケットができていると思います。去年だったら自分が無理にいって無茶なシュートを打ってしまった場面もありましたけど、周りをもっと巻き込んでいきたいです。自分のパスというより、決めてくれる選手に感謝しながらやっていきたいと思います」
内容的にも大きな手応え「今日の勝ちは良いきっかけになると思っています」
前日に敗れたリベンジを果たすなど今シーズンもここまで順調に白星を積み重ね、リーグ屈指の成績を残している琉球だが、チームには自分たちが好調という認識はない。桶谷大ヘッドコーチは現状をこう語る。「まだまだ再現性の高いバスケットの面で不安定です。負けた時はボールが回らず、スペースのバランスが悪く走られて負けることが多いです。去年は(外国籍2人と帰化選手を同時起用する)ビッグラインナップで押し切れるところもありましたが、それがなくなった中で勝つ確率を上げていくためにはハンドラーの日本人選手たちがいかに良い状況判断をできるかが本当に大事だと思います。そこの成長がないと去年よりも前に進めないと正直、思っています」
この指揮官も最重要視する日本人ハンドラーの要こそが今村だ。「昨日みたいな形で、昨シーズンの名残ではないですがオフェンスでインサイドのゴリ押しで行ってしまうと、そのひずみがディフェンスに出る。それが自分たちの負けパターンになっています」。こう課題を語る今村だが、だからこそ悪癖を修正した今回の勝ちには大きな手応えを得ている。「ただ、今日は全員がボールに触って効果的な攻めができました。今日の勝ちは良いきっかけになると思っています」
昨シーズン、リーグ最高勝率をマークし西地区5連覇中の琉球は今シーズンも順調に勝利を重ねているが、島根スサノオマジック、広島ドラゴンフライズ、名古屋ダイヤモンドドルフィンズも高勝率で西地区はかつてないハイレベルな首位争いとなっている。ただ、その中でも「現実的なことを言えば西地区は非常に混戦で、負けを教訓にして成長していくとは簡単には言えないです」と現状をしっかりと把握しつつも今村は、シーズン当初から語っている「失敗を積み重ねて次に繋げていくシーズン」という考えをブラさずにいる。
「去年はリーグ記録の20連勝などうまくいきすぎて、宇都宮さんに敗れたファイナルで自分たちの積み上げが足りていなかったところが出てしまったと思っています。去年以上に試合での失敗を還元していかなければいけない。勝ちながら成長するのがベストですが、チームとして悪い時にどういう行いをするのかで本質が出てきて、そういった部分がすごく大切になると思います」
そして、もう1つ変わっていないのはエースとして自分がチームを勝利に導いていく強い思いだ。「(ハンドラーとして)周りを生かすとは言っていますが、試合を決める、勝利を手繰りよせる部分では自分が責任を持ってプレーしていかないといけないと思っています。そこは任されている部分でもありますし、2023年にはより自分に厳しく貪欲にやっていきたいです」
ここから琉球は、横浜ビー・コルセアーズ、川崎ブレイブサンダース、群馬クレインサンダーズなど、1月は勝率5割以上の相手とのアウェーゲームが続くタフなスケジュールとなっている。ここでいかに好成績を残せるかは、順位争いにも大きな影響を与える。地区6連覇に向けての1つの大きな壁を乗り越えるためには、周りを巻き込みつつここ一番で自らシュートを決める、今村のエースとしての働きが欠かせない。