タイラー・ヒーロー

ジミー・バトラーとビクター・オラディポも状態を上げる

タイラー・ヒーローの手からシュートが放たれた瞬間、バム・アデバヨは「ユタのファンには気の毒だな」と思ったそうだ。映像を見返すと、シュートの軌道を見逃さないように見つめるアデバヨの姿が確認できる。

第4クォーター残り6.3秒、ヒートにとっては納得のいかない判定でフリースロー3本がジャズに与えられ、ラウリ・マルカネンがこれを3本すべて成功させて123-123の同点となった。ヒートとしては悪い流れだが、すぐにリスタートしたヒーローは全速力でボールを前へと運ぶ。

クロスオーバーからの加速でジョーダン・クラークソンかわし、コリン・セクストンが飛び込んで来ないのをそのまま突っ切り、ラウリ・マルカネンが寄せるよりも早くプルアップを放つ。残り1.5秒で放ったタフショットではあったが、ほんのわずかな瞬間でもリング方向のコースが空き、身体はひねって体勢は十分でなくても、指の先まで神経の行き届いたシュートフォームは、アデバヨに入ると確信させるだけのものがあった。

「自分で打つにせよチームメートの誰かが打つにせよ、とにかくシュートを打ちたいと考えていた。場所がどこからであっても、1本足でも2本足でも、とにかく打とうとした。スペースが見えた瞬間に打った感じだ。オーバータイムには入りたくなかったから、決まって良かったよ」とヒーローはホッとしたように語る。

ヒーローにとっては今シーズン3度目のゲームウィナー。ヒートは勝負どころのオフェンスでの苦戦が目立ち、前日のナゲッツ戦ではラスト2分で2-9と失速して逆転負けを喫している。さらにこの試合ではジミー・バトラーを右膝の診察のために欠いていた。

そんな中、アデバヨが32得点、ヒーローが29得点と結果を出したが、彼ら個人が活躍しただけでなく、45本のフィールドゴール成功のうち32本にアシストが付く、チームオフェンスが機能した結果でもあった。ヒートを率いるエリック・スポールストラは「チームで良いシュートチャンスを作り出すために、規律を守りアンセルフィッシュにプレーすることを重視した。ボールタッチやシュートの数は一切気にせず、オープンな選手にパスが回ることを意識した」と、好調の理由を語る。

出場した10選手すべてが得点を記録したことは、ヒートにとって大きな意味がある。そして、前日の悔しい敗戦からすぐに立ち直るメンタリティの強さも見せ、チームにとっては勢いの付く1勝となりそうだ。

「そう願いたいね。昨日の負けは痛かったけど、だからこそ今日はその分まで頑張らなきゃいけなかった」とヒーローは言う。

バトラーはケガの状態が悪いわけではなく、11月後半を欠場することになった右膝のチェックを受け、専門医から問題ないとのお墨付きを得たそうだ。そしてビクター・オラディポがベンチからの出場でシーズンハイの23得点を記録したのもチームにとっては良い材料だ。オラディポはヒート在籍3年目だが、シーズンを通して健康でプレーしたことがない。それでも本人は「僕の旅は他の人のそれと大きく異なるもので、とにかく我慢が求められる。それでも、遠からず自分の目指す姿になれると思う」と、非常に良い感触を得ている。