レブロン・ジェームズ

レブロンの求める『今、勝てるチーム』に応じられないレイカーズ

レブロン・ジェームズとレイカーズは分断へと向かっている。12月28日のヒート戦に敗れた後、レブロンは「僕は勝ちたい。自分自身にそのチャンスを与え、優勝を争いたい」と語った。この言葉をあえて発するのは、彼が今その環境にいないからだ。

その2日後のホークス戦、レブロンは47得点10リバウンド9アシストというモンスタースタッツで38歳の誕生日を祝うとともに、年齢による衰えをあらためて否定した。12月は17試合中14試合に出場して平均31.2得点、7.6リバウンド、7.0アシストと、リーグトップレベルのパフォーマンスをコンスタントに発揮している。ただ、それでもレイカーズの15勝21敗という成績はタンクしているチームと大差がない。レブロンの活躍はレイカーズ周辺の雑音を消すのではなく、「レブロンは健在なのにレイカーズは……」という雑音を生み出す。10連勝ぐらいしてプレーオフ圏内に入らない限り、この状況は変わらないはずだ。

レブロンがレイカーズの現状に納得していないのは明らかだ。レブロンは今シーズン開幕前に推定2年9710万ドル(約130億円)でレイカーズとの契約を延長している。この際の交渉で両者の間にはチーム強化の方向性で合意したはずだが、それが実行に移されたようには思えない。ラッセル・ウェストブルックのトレードはまとまらず、他にチームをテコ入れする補強もないまま開幕を迎え、そしてチームは低迷している。

レイカーズの意思決定にレブロンは大なり小なり関与しているが、決定権はない。それは去年1年のレイカーズの動きが示している。レブロンとともにNBA優勝を勝ち取ることと、2027年と2029年の1巡目指名権を出し惜しむことは矛盾する。レブロンに必要なのは『今、勝てるチーム』だが、レイカーズは『レブロン以後』のチーム立て直しに有用となる2つの1巡目指名権に固執し、手元に置き続けている。

レブロンの契約は来シーズンまで保証され、2024-25シーズンはプレーヤーオプションとなる。今シーズン終了まではトレードできないが、レブロン自身が希望すれば話は別。そして彼は「勝ちたい」のだ。半年前に戻れるとしたら、彼はレイカーズとの契約延長を選ばないだろう。レブロンを中心にする優勝を狙う意思はあっても戦力が足りず、ロスターを変えるための柔軟性もない。今シーズン『も』捨てたとして、来シーズンにレイカーズが劇的に良くなる見通しは、少なくとも今はなかなか立たない。

レブロンは20年のキャリアで一度もトレードを経験していない。だが、それは起こり得る。レイカーズからすればレブロンの放出は再建モードへの突入を意味するが、トレードを選択することで再建をより良いものにできる。そして38歳になった今も、レブロンは多くのチームが欲しいタレントであり続けている。

『CBS SPORTS』はレブロン獲得に最も大きな関心を持つチームとしてヒートを挙げている。言うまでもなくレブロンが全盛期を過ごしたチームであり、球団社長のパット・ライリーにヘッドコーチのエリック・スポールストラと馴染みの人物も多い。全盛期を過ぎたカイル・ラウリーを出すことでサラリーの調整は容易で、1巡目指名権も3つは提供できる。レイカーズが求めるであろうタイラー・ヒーローを出すか出さないかの交渉は難航するだろうか、1巡目指名権を手放すのをためらうレイカーズとは全く違う態度をヒートは取るはずだ。

『CBS SPORTS』は他にも有力候補を挙げている。ドノバン・ミッチェルを取り損ねたニックス、ジェームズ・ハーデンが去った後に新たな『ビッグ3』を模索するネッツ、そして王朝の第2期を打ち立てられるかどうかの勝負どころにあるウォリアーズ。本命のヒートを含め、どこもレブロンが加われば大きな戦力アップとなる。

アンソニー・デイビスは先日会見を行い、足のケガが当初の想定より軽傷で、長期離脱に繋がる手術をオフに先延ばしして比較的早い時期に復帰したいとの考えを語った。これに加えてトレードデッドラインまでに有効な手を打てれば、レイカーズは再び競争力を取り戻すかもしれない。ただ、今までできなかったことがあと5週間でできるかどうか、疑わしい部分もある。そうなれば最後の数日で、レブロンのトレードはいよいよ実現味を帯びてくるはずだ。