ベスト8で28得点を挙げ、優勝候補の福岡大濠を破る立役者に
今年のウインターカップを大いに盛り上げたチームの1つが藤枝明誠だった。ベスト8で優勝候補の福岡大学附属大濠に78-64と快勝すると、ベスト4では優勝した開志国際と最後まで勝敗が分からない激闘を繰り広げた。残り1秒から放った同点シュートが惜しくも外れ76-78で敗れたが、インターハイでの4強進出がフロックではなく、今年のバスケットボール界を代表する好チームであることを証明する見事な戦いぶりだった。
この快進撃を牽引したのが2年生の赤間賢人だ。初戦となった2回戦で19得点、3回戦で34得点を挙げると、ベスト8でも福岡大大濠を相手に28得点をマーク。そして、準決勝でも試合序盤にファウルトラブルに陥りプレータイムが制限された中で25得点と、今大会屈指のスコアラーとして強烈な印象を残した。
藤枝明誠の金本鷹コーチは、赤間の卓越した得点力に絶大な信頼を寄せる。この周囲の期待に応えるプレーを見せた赤間は、自身のパフォーマンスをこう振り返る。「先生から点を取ることが自分の仕事と言われています。このウインターカップでそれを徹底してやれたことは良かったです」
今大会の赤間は得意の3ポイントシュートに加え、巧みなボールハンドリングから緩急をつけたドライブでマークマンを振り切ると、オフバランスになってもレイアップを沈める決定力やシューティングファウルをもらう巧さを見せた。ペイントエリアで得点を量産できたのは「インターハイではフィジカルの部分で通用しないところがあったので、そこは意識して強化しました」という、努力の結果だ。
金本コーチの期待「日の丸を背負って日本バスケット界を賑やかにしてほしい」
ただ、目標である日本一を達成できなかっただけに、自身のプレーに満足することは全くない。次のように課題を挙げる。「ドライブの後のフィニッシュや、ディフェンスをしっかり見られていないことでターンオーバーが多くなってしまったので、マークがきキツイ時にはパスで繋ぐこともやっていかないといけないです。改善するところはいっぱいあって、チームを勝たせられる選手になりたいです」
試合中、常にポーカーフェイスで良い意味でマイペースなところがある赤間は、特にベスト8以降の自身に対する大きな注目にも「すごいなと思いましたが、やることは変わらないです」と淡々としている。世代有数のスコアラーであることを証明したが、「今も大学とかその先のことはあまり考えていないです。チームのためを意識してやっていきたいです」と続ける。
だが、当然のように周囲は赤間が、より大きな舞台で活躍できる逸材になると信じている。だからこそ金本コーチは、来年が最終学年となる赤間を「一番らしくないタイプと思いますが」と前置きしながらもキャプテンに指名する考えを明かした。「彼の将来のことを考えると藤枝明誠で終わる選手ではないと思っています。日の丸を背負って日本バスケット界を賑やかにしてほしいです。赤間だけでないですが、キャプテンになることでチームメート、いろいろな人たちのことを考えられる人間性を身につけてほしいです」
そして赤間は来年について、このように意気込みを語る。「来年も得点を取ることが役割だと思います。チームのプラスになるプレーをやっていきたいです。チームとしてはうまくリズムが作れない時、足が止まってそこからもっと悪くなって崩れてしまう部分があります。そういう時に一度落ち着かせて、自分たちのリズムを取り戻せるようにしていきたいです」
来年の藤枝明誠は、今大会1年生ながら長いリーチを武器にリバウンドとブロックで強烈な存在感を発揮したボヌ・ロードプリンス・チノンソのさらなる成長も期待できる。赤間とロードプリンスのコンビが高校バスケ界で随一のワンツーパンチとなり、今年の全国ベスト4からさらに上へと行ける潜在能力は十分にある。
このチームの持っている力をしっかり発揮するためにも、最終学年となる赤間には非凡な得点力に加え、リーダーシップも発揮し、名実ともに藤枝明誠の大黒柱として大暴れする姿を見せてもらいたい。