「お互いを信じ合って40分間戦うことが時間が進むにつれてできなかった」
信州ブレイブウォリアーズは、12月28日の水曜ナイトゲームで中地区首位を走る川崎ブレイブサンダースと対戦した。
前節と同様に生原秀将とアンソニー・マクヘンリーがコンディション不良のため欠場。そのため、9人で敵地での戦いに挑んだが、試合の立ち上がりから人数の少なさを感じさせないアグレッシブなディフェンスを見せ、第1クォーターだけで川崎から5本のターンオーバーを誘発し、そこから7得点を記録した。堅守に加えて、オフェンスでも川崎のゾーンディフェンスに対して、バックコート陣による勢いあるペイントアタックからのキックアウトなどでズレを作り、3ポイントシュート成功率54%(11本中6本成功)と高確率で沈めたことで、28-18と先行した。
勝久マイケルヘッドコーチも「ゾーンを相手に良いパーセンテージで出だしからシュートを決めることができて、良いスタートを切れました」と立ち上がりのパフォーマンスには手応えを得つつも、「ただ、ディフェンス面でミスマッチのところのダブルチームのローテーションの遂行力や、その部分でのディティールだったり、ピック&ロールのカバレージの遂行力の部分で前半はミスが多かった」と振り返ったように、第2クォーターになると、信州ディフェンスの綻びを川崎に見抜かれ始めた。
オン3を起用する川崎に対して3番のところでサイズのミスマッチができたため、信州は川崎のビッグマンに対してダブルチームで対応し、アウトサイドシュートにも必ず誰かしらがシュートチェックに飛び込んでいた。そのため、川崎にコートを広く使われると、信州ディフェンスも外に引き付けられてしまい、中に空いたスペースにニック・ファジーカスなどにカットインされて連続得点を許す場面が多々見られた。それにより、前半を終えた時点で信州の1点リード(44-43)と、ほぼ振り出しに戻ってしまった。後半も一進一退の攻防を繰り広げていたが、藤井祐眞を筆頭にディフェンスのギアを上げた川崎を前にターンオーバーが増え、最終スコア78-87で敗れた。
勝久ヘッドコーチは「オフェンスでも良いシュートはたくさん打てているのに我慢できずに焦ったプレーやタフなシュートを選択してしまいました」と言うと、「我慢強さ、メンタルの部分で差が出てしまった」と続けた。「川崎さんは品のあるグレートなチームですし、ミスマッチはあちこちにできるので、カバレージが簡単ではありません。その上で、一つひとつのディティールを遂行できなかった部分と、メンタルの部分で離されてしまいました」
「自分たちのバスケットを遂行すれば、必ず勝てるチームです」
攻守ともに勢いのあるプレーでチームを牽引していた前田怜緒も試合後の会見で『メンタルの弱さ』を敗因に挙げた。「前節同様、マックさんがケガをしていて同じメンバーでやる中で、コーチ陣がこのメンバーでやっていくプランを作ってくれました。僕たち選手はそれを遂行するだけでしたが、40分間最後まで遂行する力がなく、そして自分たちのメンタルの弱さが出ました。それが敗因とかではないですけど、自分たちの弱みが出た試合でした」
今の信州は大黒柱であるウェイン・マーシャルがインジュアリーリスト入りし、マクヘンリーまで欠いている。この試合では全員が積極的にリングにアタックしていたが、その反面で「一人ひとりの意識がすごくて、『自分がやらなきゃ』というのはあると思います。ただ、やっぱり我慢すべきところは我慢して、お互いを信じ合って40分間戦うことが時間が進むにつれてできなかったと思います」と前田は分析した。
遂行力や我慢など、課題が浮き彫りになった川崎戦ではあったが、最後までコート上の5人全員がエナジー全開のプレーを見せ続けた。そこには指揮官も自信を持っていると言う。「我々の選手たちは本当にハートが熱い選手ばかりで、どんな状況でも、ケガ人がいてもなんだろうと、最後まで必ずエナジーをしっかり出す選手です。遂行力やメンタルの話をしましたが、エナジーは今日に関しては一度も疑問に思っていないです」
もちろん、全員がエナジー溢れるプレーを見せたが、その中でも際立っていたのが前田だ。対戦相手の藤井はリーグでも1、2を争うほどのエナジー溢れるプレーヤーだが、その藤井に匹敵するほどのエナジーを見せ続けた。前田は言う。「藤井選手は本当にずっと見ている選手で、毎試合30分近く出ていても、40分間走り切れるぐらいのプレーをしています。僕もエナジーの部分で言ったら自信があるじゃないですけど……。でも、藤井選手や篠山(竜青)選手はエナジーにプラスアルファで何かしらがあるので、そこの差を学ばなければと思います」
前節を終えた時点では中地区4位だった信州だが、水曜ナイトゲームを終えて中地区5位に転落した。それでも、首位を走る川崎とのパフォーマンスの差は決して大きいものではなく、前田も「自分たちのバスケットを遂行すれば、必ず勝てるチームです」と語っている。それだけに、ここ数試合で浮き彫りになったチームプレーの遂行力や一つひとつの徹底力を改善できた時、自ずと勝ち星も増えていくに違いない。