ルカ・ドンチッチ

大記録を打ち立てて勝利した後の第一声は「死ぬほど疲れた」

「勝てた試合だし、勝たなきゃいけない試合だった」とニックスのイマニュエル・クイックリーは言う。残り33秒で9点差、ここからマーベリックスが逆転するとは誰も予想しなかっただろう。たとえ、その時点でルカ・ドンチッチが54得点16リバウンド10アシストというモンスタースタッツを叩き出していたとしても。

『ESPN』によれば、記録が残っている過去20シーズン、NBAで残り35秒を切って9点差以上の差があるケースでの勝敗は0勝1万3884敗だそうだ。しかし、ドンチッチはここからスティール、オフェンスリバウンドをタップで押し込み、ファウルももらってのバスケット・カウント、スペンサー・ディンウィディーの3ポイントシュートをアシストとクラッチプレー連発でマブスの猛反撃を牽引する。

そして2点差まで迫った残り4.2秒、2本目のフリースローをドンチッチはわざと外した。ボードに当たって跳ね返ったボールは、両チームのリバウンド争いの手に弾かれてドンチッチのところに落ちる。時間がない中、空中でそのまま放ったシュートがリングに吸い込まれ、試合はオーバータイムへ。こうなると勢いは完全にマブスのもの。延長の5分間でドンチッチは7得点を積み上げ、11-6と上回ったマブスが逆転勝利を収めた。

試合を終えた直後、コートインタビューに応じたドンチッチの第一声は「死ぬほど疲れたよ。ビールが欲しいね(笑)」だった。

試合後の会見で、延長戦に持ち込んだシュートについて「あんなの練習でもやったことがない。残り時間が2秒ぐらいで、たた入れと祈って投げただけ」と振り返る。そして、決まった後の尋常ではない喜びぶりを「実は、あれで勝ったと勘違いしたんだ。でも同点に追い付いただけだと気付いて『ああっ』ってなった」と説明する。

ドンチッチは60得点21リバウンド10アシストを記録。21リバウンドはドンチッチにとってキャリアハイ、60得点はマブスにおける1試合最多得点の新記録だ。50得点20リバウンド超えのトリプル・ダブルは1960年代にエルジン・ベイラーが1回、ウィルト・チェンバレンが2回やっているが、それに続くもの。60得点を奪ってのトリプル・ダブルはロケッツ時代のジェームズ・ハーデンが持つNBA記録だったが、ドンチッチはこれに並んだ。

ヘッドコーチのジェイソン・キッドは「今夜のルカは、ベイラーにチェンバレンといった歴史上の偉人に並んだ」と語り、「だが、ロッカールームでの彼はチームの勝利であることを強調していた。そういうヤツなんだ」と続けた。

会見でドンチッチはこう語る。「チーム全体が戦い続けた。僕たちはまだチャンスがあると信じて、みんなで一緒に戦ったんだ」