「大濠さんが勝つだろうと思っているところでウチは勝ちにいく」
ウインターカップ男子準々決勝、藤枝明誠vs福岡大学附属大濠の一戦は、強気な姿勢を貫き、序盤のリードを最後まで守り抜いた藤枝明誠が78-64で勝利した。
藤枝明誠は優勝候補である福岡大濠のオーラに飲まれることはなかった。それは金本鷹コーチの秘策によるモノが大きい。「今朝、ミーティングでスラムダンクの山王工業戦で赤木剛憲が『悪いが皆さんの期待通りにはならん』と言っていた場面を全員に見せ、俺の今の気持ちはこれだと伝えました。どこも優勝候補筆頭の大濠さんが勝つだろうと思っているところでウチは勝ちにいく。40分間しっかりやりきろうとミーティングで話しをしました」
この言葉に勇気づけられた選手たちは序盤から大濠を圧倒した。持ち味であるディフェンスから走るスタイルを体現し、3ポイントシュートも高確率で決めて、44-35で前半を終えた。
9点のビハインドは大濠にとって許容範囲と言える。それでも、一度狂った歯車はなかなか嚙み合わなかった。片峯聡太コーチは言う。「藤枝のオフェンスに対して今日は我慢だと話していましたが、ブロックしようとするなど少し浮足立っていました。どうしても慌てている感じや動揺がチームにありました。それを上手に持っていくマインドのコントロールや戦術の嚙み合わせができなかったのが悔やまれますし、自分自身の力不足を痛感しました」
大濠は4ブロックを許したボヌ・ロードプリンス・チノンソの高さが気になり、ゴール付近のイージーシュートをポロポロと落とし、フィフティ・フィフティのボールも支配された。一方の藤枝明誠は破壊力抜群のオールコートプレスを谷俊太朗が突破し、エースの赤間賢人がゲームハイの28得点を記録するなど、それぞれが役割を果たした。また、「大濠の弱点としてボックアウトにルーズなところに目をつけ、オフェンスリバウンドに積極的に行きなさいと伝えました。そうすることで大濠さんは速い展開が出しづらくなる」との金本コーチの指示を体現し、サイズで劣りながらも大濠を上回る21本ものオフェンスリバウンドを獲得した。その結果、相手の速攻を防ぎ、ハーフコートオフェンスを多く仕向けたことが勝敗に大きく影響した。
そして、「追いかける展開になった時、動揺が加わって第4クォーターの終わりのような雰囲気になってしまった。このチームの精神的な未熟さを感じた」と、片峯コーチが振り返ったように、ラスト3分間に6-10と失速し、連覇の夢が絶たれた。