本人は即座に否定「その記事がどこから出てきたのか分からない」
ジェームズ・ハーデンは今シーズン限りでセブンティシクサーズを去り、ロケッツに復帰する。NBAの名物ライター、アドリアン・ウォジロナウフスキのスクープだ。
ハーデンはこの夏に1500万ドルの減額を受け入れてシクサーズと2年契約を結んだ。それでも2年目の来シーズンはプレーヤーオプションで、彼がこれを破棄すれば今シーズン終了後にフリーエージェントとなる。シクサーズの球団社長を務めるダリル・モーリーはロケッツ時代のGMで、ハーデンにとっては戦友とも言うべき人物。今シーズンの優勝を果たすためにハーデンはトッププレーヤーでありながら異例の減額を受け入れ、ロケッツ時代にともに戦ったPJ・タッカーとダニュエル・ハウスJr.、モントレズ・ハレルを補強した。
今シーズンはシクサーズで優勝を目指すが、その先は分からない。すでに巨額の富を稼いだとしても、大幅な収入減をずっと続けるつもりはハーデンにはないだろう。夏の時点ではハムストリングのケガを長く抱えて、どれだけやれるか分からなかった。今シーズンに自分の価値をあらためて示し、失った年俸を取り戻そうというのは自然な考え方だ。今のハーデンは復活のパフォーマンスを続けており、シクサーズとの2年目、3564万ドル(約46億円)の契約は破棄する方向になるだろう。
ハーデンは自らロケッツを去ることを望み、ネッツへと移籍した。ネッツでケビン・デュラントとカイリー・アービングとの『ビッグ3』でNBA優勝を狙ったが、彼自身は厄介なケガを抱えてのプレーを余儀なくされ、チームには実力はあってもトラブルが絶えず、見限ってシクサーズに移籍することになった。こうして移籍を繰り返す中でも、ハーデンはヒューストンのコミュニティと良好な関係を保っており、ここが『家』であり続けている。
そのロケッツではジェイレン・グリーン、ケビン・ポーターJr.ジャバリ・スミスJr.といったヤングコアが成長しており、なおかつハーデンをマックス契約で迎え入れるサラリーキャップの余裕も簡単に作り出せる。今は9勝23敗で東カンファレンス最下位に沈んでいるが、このままビクター・ウェンバニャマを筆頭にタレント豊作と言われる来年のNBAドラフトで良い選手を獲得し、そしてハーデンを帰還させる。そんな皮算用があるのかもしれない。
12月25日、シクサーズは敵地でのニックス戦に119-112と快勝。ハーデンは29得点13アシストで勝利に貢献した。試合前のメディア対応でロケッツ復帰の報道について聞かれたハーデンは明らかに不機嫌になり、「なぜクリスマスにそんな質問をするんだ? メリークリスマスも言ってないじゃないか。試合の前に話すことじゃない」と回答を拒否。試合後の会見でも「その記事がどこから出てきたのか分からないが、僕はここにいることに興奮している」と答えている。
今シーズン終了後にフリーエージェントになる権利があれば、それを最大限に活用するのは当然のこと。これも経験豊富なハーデンの、シクサーズとの再契約を見越した交渉術の一つかもしれない。それと同時に、ロケッツ復帰というアイデアにはロマンがある。ハーデンはロケッツを離れ、自分のワンマンチームではない環境で勝つためにパスファーストのポイントガードへとプレースタイルを変えた。これは若くて有望な選手が揃うロケッツにもハマるに違いない。スターの競演ではなく、若いチームを自分が引っ張ってNBA優勝を目指すのも、彼のモチベーションを刺激するに違いない。
いずれにせよ、今のハーデンはその腹を探られたくはない。少なくとも現時点では、シクサーズでこのシーズンを勝つことしか考えていないのだから。