観客として通ったシクサーズのアリーナで初めてプレー
ジェイレン・デューレンは今年のNBAドラフトでホーネッツから1巡目13位指名を受け、ニックスを経由するトレードでピストンズにやって来た。再建中のチームだが、タフに戦うことのできる若手を揃えるピストンズにおいて、デューレンは開幕から主力として活躍している。
その彼にとってNBAでの31試合目が、馴染み深いウェルズ・ファーゴ・センターでの試合となった。フィラデルフィア近郊で生まれ育った彼は、このアリーナの観客席からNBAでプレーすることを夢見るようになった。彼はこれまで畏敬の念を持って眺めていたコートに立ち、自分が座っていた観客席には家族や友人を招待した。
東カンファレンス最下位のピストンズは5連勝中のシクサーズを止められず、93-113で敗れたが、彼は地元のヒーローであるジョエル・エンビードとマッチアップする姿を親しい人たちに見せた。12月の平均得点が35点のエンビードを、フィールドゴール16本中6本成功の22得点に抑えたのは、上々の出来と言っていい。28分プレーして7得点8リバウンド4アシスト、これが彼の地元デビュー戦のスタッツとなった。
開幕時点ではベンチスタートだったが、今では先発になった。デューレンはその違いを「相手のベストプレーヤー、リーグでも最高のビッグマンとのマッチアップを僕が引き受けることになる」と語り、大歓迎している。「僕は挑戦者として、相手の映像をしっかり研究して向かっていく。どの試合も刺激的だ。エンビードに(ニコラ)ヨキッチ、AD(アンソニー・デイビス)など、リーグで実績のあるすべてのビッグマンと対戦したい。彼らは僕が行きたいポジションにいるからね。彼らの持っているものを自分のものにしたいんだ」
ピストンズを率いるドウェイン・ケーシーは、デューレンを「とても素直で勉強熱心な選手」と評している。「若手にとって大事なのは学び続けること。魔法のように成長する手段はないんだ。どのルーキーも同じだが、一つずつ学んで成長していくしかない。ジェイレンはあるべきステップを踏んでいるよ」
デューレンのポテンシャルはすでにNBAクラスだと証明されており、これからはNBAの優れたビッグマンに並ぶことを目指す。リバウンドで強さを見せたかと思えば速攻に走る、サイズと運動能力を兼ね備えた万能性が彼の持ち味。弱点はシュート力のなさで、3ポイントシュートを武器とせず、フリースローも成功率55.0%と低い。ディフェンスでの周囲との連携にはまだ改善の余地があり、相手に合わせてディフェンスに変化を加えるような場合に判断が遅れがちだが、それも試合を重ねるうちに改善されていくだろう。
デューレンは言う。「まだまだ未熟だと言われるよ。でも未熟と言われるのは僕に成長の余地があるからで、悪いことじゃないと思っている。すべての面でもっともっと成長できるはずだ。最高のプレーヤーになることだけを目指して頑張るよ」
そして、デューレンはチームの勝利にもこだわっている。「僕らは若いチームで、ミスを恐れるよりも挑戦すべきだ。ただ、ターンオーバーやポジショニングのミス、良いシュートを打てなかったり、避けられるミスは避けなきゃいけない。ベテランが多いチームは経験豊富で、僕らに同じことはできないかもしれないけど、若いからミスをしてもいいとは考えない。できる限り完璧なプレーを目指すのが大事だと思う」
まだまだ粗削りで、身体能力に任せたプレーが多いデューレンだが、バスケに取り組む姿勢はピストンズ関係者の誰もが称えるところ。シュート力はそう簡単に身に着かないだろうが、ディフェンス面ではすでに成長が見られる。エンビードやヨキッチ、デイビスと並ぶビッグマンになれると信じて、彼はかつてあこがれたNBAのコートに立ち続ける。