2018-19シーズンの優勝を再現する、ケビン・デュラント獲得のチャンスを逃す
ラプターズは6連敗中で13勝18敗、浮き沈みの激しいNBAの中で安定した戦いを見せるチームのはずが、2012-13シーズンの11勝20敗以来となる低調なスタートを切った。まだレギュラーシーズン全日程の3分の1を消化しただけで、昨シーズンのNBAファイナルに進出したセルティックスもこの時期は同じような成績だったが、今のラプターズにはなかなか浮上のきっかけが見いだしづらい。
しかも年末年始のスケジュールが非常に厳しい。ここから8連勝中のニックスに4連勝中のキャバリアーズ、カワイ・レナードが復帰して調子を上げるクリッパーズ、西のトップを争うグリズリーズとサンズと、好調なチームとの対戦が続く。ペイサーズ戦を挟んだ後にはバックス、ニックス、トレイルブレイザーズとの試合で、ここを勝率5割で乗り切るのは相当厳しそうだが、今より順位を下げるようではシーズン前半戦であっても今後が厳しくなる。
ラプターズのファンの多くは、この夏にケビン・デュラントを獲得しなかったことを後悔しているだろう。デュラントはネッツの先行きを悲観し、フロントにトレード要求を突き付けたが、交渉が進展しないために要求を撤回して残留を決めている。
あの時点でデュラントは間違いなく『トレード可』であり、ラプターズもその行き先候補に入っていた。この時、ラプターズは1巡目指名権に加えてスコッティ・バーンズを手放すという条件を受け入れなかったと言われている。
その真偽はどうあれ、デュラントが加わっていたらラプターズは東カンファレンスの優勝候補に躍り出ており、今とは全く違う年末を迎えていたはずだ。チームリーダーのフレッド・バンブリートは先日、サージ・イバカのYoutubeに出演して、このトレードについて「僕ならやらない」とコメントしている。だが、チームの成績がここ10年で一番悪いとなると、その判断が正しかったのかと考えざるを得ない。
かつてのラプターズはカワイ・レナードを獲得して、2018-19シーズンのNBA優勝を勝ち取っている。ニック・ナース体制をスタートさせるにあたり、フランチャイズプレーヤーのデマー・デローザンを放出するトレードでカワイを獲得。カワイが1年でフリーエージェントとなり出て行く可能性を織り込み済みの勝負で最高の結果を出した。
現在に話を戻すと、ここで考えるべきはラプターズの現有戦力の『タイムライン』だ。バンブリートは今シーズン終了後に契約最終年を破棄してフリーエージェントになれる。パスカル・シアカムとOG・アヌノビーは2024年にフリーエージェントとなる。彼ら3人は2019年に若手として優勝に貢献したことで選手としての評価を高め、現在に至っている。バーンズは将来有望な選手かもしれないが、プレーオフに行けるかどうか、行けてもファーストラウンドで敗退するチームでそれなりに活躍しても、彼らの地位までたどり着くのは難しい。
ラプターズはデュラント獲得のチャンスを逃した。デローザンもカイル・ラウリーもチームを優先して放出したクラブが、その再現の機会をモノにできなかった。だが、それもまた違うのかもしれない。バンブリートとシアカム、アヌノビーのうち何人かをトレード出して、バーンズと来年のドラフトに賭ける──。マサイ・ウジリ球団社長の頭には、その選択肢もあるはずだ。
決断はもう少し先でいいが、トレードデッドラインまでのあと1カ月半が期限となる。低空飛行がこのまま続き、プレーオフ進出が現実的ではない、行けてもプレーイン・トーナメント圏内というような状況になれば、ラプターズはかつてそうしてきたように『非情な決断』を下すはずだ。特に強敵との対戦が続く年末年始の結果が、ラプターズの将来を大きく左右する可能性は高い。