「こんなに褒めてくれることがなかったのでちょっと戸惑っています(笑)」
ヘッドコーチやスタッフが多く入れ替わり、本格的に新たなフェーズを迎えた今シーズンの千葉ジェッツにおいて、一際存在感を増しているのが原修太だ。
アーリーエントリーで入団して以降、千葉J一筋で在籍7シーズン目を迎えた原は前ヘッドコーチの大野篤史に多くのチャンスを与えられながら、押し負けないパワーを備えたハードワーカーへと成長。地元出身の『末っ子キャラ』の印象は薄れ、現在は押しも押されもせぬ主力選手となった。
天皇杯4次ラウンド、名古屋ダイヤモンドドルフィンズとの一戦では持ち前のディフェンス力でリーグトップクラスのポイントガードである齋藤拓実を封じつつ、2本の3ポイントシュートも沈めて攻守で活躍した。そして、「本当にみんながやることをやった、最高の勝利でした」と原が振り返ったように、100点ゲームの完勝を収めた。
指揮官のジョン・パトリックもこのように試合を総括した。「最初からモチベーションが高く、特に齋藤選手と(コティ)クラーク選手の2人に良いディフェンスをして、スペーシングも良く速い流れのオフェンスもやれたので、最初から最後まで頑張った大切な勝利になりました」
パトリックヘッドコーチが言うように、齋藤に10アシストを許したものの得点は2に抑え、リーグ戦で平均20.2得点を挙げているクラークも平均を大きく下回る12得点に封じた。相手の主力選手を自由にさせなかったことが大勝の最大の要因となり、その役割を担った原を高く評価する。「原はダントツでリーグで一番良いディフェンダーです。外国籍も日本人選手も、ポイントガードも4番を相手にしてもイージーなシュートを打たせない。ポジションに関係なく、1番から4番まで守れます。ディフェンスはクイックネスやパワー、持久力も必要だけど意思や心が大切です。彼の絶対に得点を取らせないという意思は素晴らしい」
パトリックヘッドコーチが絶賛していることを伝えると、原は照れ笑いを浮かべながら「JP(パトリックヘッドコーチ)は僕のことをめちゃ褒めてくれるんです」と言う。「今までも褒めてもらえたことはありましたけど、こんなに褒めてくれることがなかったのでちょっと戸惑っています(笑)。それこそ(佐藤)卓磨は怒られているし、僕に対して優しいのでモチベーションは上がります」
ディフェンスの貢献度はオフェンスよりも可視化しにくく、原自身も何が良いのかを完全に理解しているわけではない。ただ、個ではなくチーム単位では明確な違いがあるという。「(出場時の)プラスマイナスをJPが意識していて、僕が出ている時間帯はすごく良いと言ってくれているので、良いディフェンスができているのかなと思っています」
「僕や卓磨が良いディフェンスをすれば、絶対に良いオフェンスに繋がる」
ディフェンス面で称賛された原だったが、原自身は名古屋D戦でのパフォーマンスを特別視していない。「良くなかったとは思わないですけど、特別に僕が何かをしたわけでもないかなと。拓実の調子が悪かったのと、僕はいつも通りな感じでした。拓実はパスをさばくタイプなので、周りが良かったと思います」
原が指摘したように、齋藤の調子は決して良くはなく、齋藤本人も「シュートに行ける部分は行けていましたが、シュートタッチはあまり良くなかったです。こういう日にどうやってオフェンスを組み立てるか」と反省した。ただ、自身の調子を差し引いても、千葉のディフェンスが良かったと齋藤は言う。「互いに速い展開のバスケットをするチームです。守りたいところをしっかり守れていれば、自分たちのトランジションバスケットに繋げられていたはずなので、ディフェンスからの点数が物足りなかったです。僕以外のところのプレッシャーも強かったので、5人の共通意識が足りていなかった。それほど千葉ジェッツさんのディフェンスは素晴らしかったなと思います」
この強固なディフェンスを継続できれば、千葉Jが天皇杯王者に『返り咲く』ことも可能だろう。クォーターファイナルではA東京を下した信州ブレイブウォリアーズと対戦する。自身の役割を理解する原はすでに信州を倒すイメージができている。「僕よりも若い熊谷(航)選手、前田(怜緒)選手、岡田(侑大)選手が鍵になってくると思います。相手の中心である彼らを僕や卓磨が止めて良いディフェンスをすれば、絶対に良いオフェンスに繋がるので、そこが重要になってきます。目標は優勝ですし、挑戦者の気持ちで戦います」