エリック・スポールストラ

写真=Getty Images

「彼以上にフィットする人材を見つけられるとは思わない」

2010年から14年までの4年間、レブロン・ジェームズを含むヒートを指揮したエリック・スポールストラは、当時しくじらないようにすることだけを考えていた。

2010年のオフにフリーエージェントになったレブロン、ドウェイン・ウェイド、クリス・ボッシュがヒートに集結し、『スリー・キングス』と呼ばれたオールスター3選手による『ビッグ3』が結成された。NBAを代表する3選手が、全盛期に共闘するという異例のチームが誕生し、周囲は1年目からの優勝を期待した。

そのチームを率いることになったスポールストラは、NBA選手としての経験がないものの、ヒートのビデオコーディネーターからヘッドコーチにまで成り上がった叩き上げだ。それでも、レブロン、ウェイド、ボッシュが揃うチームを指揮することで相当な重圧を受けた。結果的にヒートは、2010-11シーズンから4シーズン続けてNBAファイナルに進出し、2012年と13年に連覇を達成。だが、レブロンとボッシュが加入した1年目は、開幕から17試合を終えて9勝8敗と苦戦した。なかなか結果がついてこないことに苛立ったレブロンが、タイムアウト中にスポールストラの肩に身体をぶつけたシーンは、まだ記憶に新しい。スポールストラは、レブロンが加わった新チームの指揮を執るルーク・ウォルトンについて、「レイカーズを率いる上で、完璧な指導者」と、11月18日の試合前『ESPN』に語った。

「彼には『パープル&ゴールド』の血が流れている。レイカーでもあり、ゴールデンステイト(ウォリアーズ)時代にもスティーブ(カー)の代理を務めて素晴らしい結果を残した」

スポールストラは続ける。「彼のこれまでのキャリアを見ても、相当に期待されるチームでやってきた。重圧がかかる環境でやってきた。彼は、それ以外の環境を知らない。今のレイカーズを指揮する上で、彼以上にフィットする人材を見つけられるとは思わない」

スポールストラが太鼓判を押すウォルトンも、レブロンを加えた1年目の今シーズン、試行錯誤を続けている。開幕から7試合を終えて2勝5敗と苦戦し、それまで辛抱強く取り組むと言い続けていたレブロンの発言にも『変化』が見られ始め、一時は解任論も報じられた。だが、11月に入ってチームの状態も上向き、4連勝を記録。現在は16試合を終えて9勝7敗という戦績を残している。

王朝時代を築くウォリアーズのスリー・ピート(3連覇)が濃厚な今シーズンの優勝は期待されていないが、最低でも6年ぶりのプレーオフ進出というノルマはこなさなければならない。シーズンハイの51得点をマークしたレブロンなら、レイカーズを再び名門チームに押し上げられるとスポールストラは見ている。

「彼は時代を超越した存在だ。毎シーズン平均27得点8リバウンド7アシストを記録できるだろう。どのチームのユニフォームを着ているかは関係ない。どのシーズンかも、年齢も関係ない。安定感は、フィジカル、メンタルと同じくらいの才能だ。彼は、どの分野でも五つ星だ」

紆余曲折あったとはいえ、スポールストラとレブロンはヒートを成功に導いた。レブロンと同じ2003年のドラフトで指名されたウォルトンは、スポールストラが感じた類の重圧とともにレイカーズを再建を推し進め、結果を残さなければならない。