桶谷ヘッドコーチ「我慢したら最後は良いことがあったゲームでした」
11月26日、琉球ゴールデンキングスが島根スサノオマジックと対戦。両チームともこの試合の前まで9勝2敗で並んでいた西地区首位決戦は、残り2分半で10点ビハインドを追いついた琉球がオーバータイムまでもつれる激闘を96-86で制している。
この試合、まず主導権を握ったのは島根だった。ペリン・ビュフォードが前半でフィールドゴールを6本中6本成功の14得点と大暴れでチームを牽引。エースを中心に決定力で上回った島根が前半で8点のリードを奪う。だが、後半早々に島根は、ニカ・ウィリアムスがリバウンド争いの際、小野寺祥太を殴ってしまいディスクォリファイングファウルの一発退場。これで得意のビッグラインナップを使えなくなると、琉球が逆にアレン・ダーラムのドライブを中心にゴール下でアドバンテージを取って逆転する。
だが、島根は安藤誓哉がこのクォーターだけで3ポイントシュート3本成功を含む16得点と大爆発して、すぐにひっくり返す。その後も安藤、ビュフォードの強力デュオを軸に島根がリードを保つが、劣勢の中でも琉球はアドバンテージのあるゴール下を粘り強くアタックし続ける。それが実を結び残り約3分にはニック・ケイをファウルアウトへ追い込んだことでさらにインサイドで優位に立つと、その後は獲得したフリースローを着実に決めることで残り20秒で遂に追いつく。そしてオーバータイムでは勢いの差を見せつけて勝利した。
琉球の桶谷大ヘッドコーチは、ハーフタイムにチームで戦うことの意思統一をしっかりできたことが大きかったと勝因を語る。「前半はオフェンスもディフェンスもうまくいかないしんどい状態で、いろいろと選手たちもフラストレーションを溜めていました。ハーフタイムでみんな一丸となって戦おうと話をして後半は良い状態でプレーできました。第3クォーターでもう一度、離された中でも我慢強くみんなが冷静にやり続けて相手ビッグマンのファウルトラブルを誘えました。いつメンタルが切れてもおかしくない状態でしたが、それでも我慢強くプレーを続けてくれました。そして流れが来た時に、一気に自分たちのバスケットをできた。我慢したら最後は良いことがあったゲームでした」
「一つになって戦えれば残りのシーズンも素晴らしい成功を収めることができる」
この試合、琉球のゴール下を支えるジャック・クーリーは28得点に加え、8つのオフェンスリバウンドを含む16リバウンドと大暴れで勝利の立役者となった。特に第4クォーターではフリースローを6本中6本成功させ、フィールドゴールは3本中3本成功のミスなしで12得点と抜群の勝負強さを見せた。
クーリーも指揮官と同じくハーフタイムでの会話が、大きなターニングポイントなったと振り返る。「ハーフタイムでコーチから、良い時も悪い時も常に同じメンタルで集中してプレーするように言われました。それが最後までできたのが大きかったです。僕はとてもエモーショナルな人間なので、一定に保つのは難しいですが、それができたことで他のチームメートにもポジティブな影響を与えられたと思います」
ゴール下の肉弾戦で圧倒的な強さを誇るからこそ、相手はクーリーに激しいファウルを繰り返して止めにくる。この試合では目の辺りに肘打ちをくらい試合後の会見では内出血の痛々しい姿だった。ただ、そういった状況でもクーリーは冷静さを失わず、ここ一番で重要な活躍をできた。
このメンタル面の成熟は、今夏に長女が生まれ父親になったことも影響している。「とてもかわいい娘が生まれ、彼女のためにもハードにプレーしています。娘と妻の素晴らしい家族がいることは自分の自信に繋がっています。そして責任感が出ていますし、それがプレーにも変化をもたらしていると思います。」
代表ウィークによるリーグ中断前最後の試合で琉球は広島ドラゴンフライズに73-80で負けている。「広島戦で負けた理由を洗い出しましたが、戦術、戦略もある中で僕が一番良くないと思っていたのはチームが一つになりきれていないところ」と桶谷ヘッドコーチが語っていた課題は今回も前半で露呈したが、後半にしっかり修正できたところに琉球の底力がある。
クーリーは自分たちがあるべき姿で戦えば自然と結果は付いてくると強調する。「お互いに支え合ってチーム一丸となって最後まで戦えました。個々の力で戦おうとしてもうまくいかない。コーチダイは、そういう風にチームを作っていない。チームとして一つになって戦えれば残りのシーズンも素晴らしい成功を収めることができる。それを今日、証明したと思います」 まだまだ不安定な部分はあるが、それでもしっかりハーフタイムに立て直して勝ちきった琉球は、今シーズンも引き続き西地区の優勝争いをリードする存在になってくるだろう。