周囲にオフボール能力の高い選手を配置、爆発力倍増
NBA第5週の週間MVPに選ばれたのは、1年前までチームメートだったディアロン・フォックスとタイリース・ハリバートンでした。開幕から1勝4敗と苦しんだものの、以降は9勝2敗と全く同じペースで勝率をあげたキングスとペイサーズから選ばれた形ですが、昨シーズンはともに苦しいチーム事情の中でトレードに踏み切った両チームが、揃ってチームの変革に成功したシーズン序盤となりました。
1年前のキングスはハリバートンをポイントガードに置き、落ち着いた組み立てから、フォックスの得点力を生かす形を採用しました。ハリバートンは7.4アシストに加え、3ポイントシュート成功率41.3%と素晴らしい効率性をもたらしましたが、フォックスの3ポイントシュートが30%を切ってしまい、特に試合の後半になるとあまりにも決まらず、チームとして勝ち切れない日々が続きました。
今シーズンはポイントガードに戻ったフォックスがスピード溢れるドライブで切り崩すだけでなく、ハリバートンとのトレードで加入したドマンタス・サボニスがインサイドのプレーメーカーとして6.1アシストを記録し、ハリバートン放出の穴を埋めています。フォックスとサボニスが外と中で起点になり、ケビン・ハーターとキーガン・マレーが素晴らしいオフボールムーブでかき回す形が作られました。
フォックスの得点力を生かすより、フォックスの周囲にオフボール能力の高い選手を配置し、爆発力を倍増させることで、キングスはリーグトップの120.0得点、リーグ26位の116.8失点で打ち勝つスタイルで好成績を残しています。6人が2桁得点を記録する超攻撃的な布陣の「取られても取り返す」スタイルは、ゲームコントロールよりも積極性で勝負しており、迷いのないオフェンスが合っているのかフォックスの3ポイントシュートも40%を超えています。
キングスは好調な成績とは裏腹にチームとしての落ち着きが足りておらず、マイボールをキープして時間を消化すれば勝利という試合終盤に、致命的な凡ミスを喫してしまうことが何回も出てしまっています。「ここにハリバートンがいれば落ち着かせてくれるのに」と放出を嘆きたくなることもありますが、ゲームコントロールよりもアグレッシブに点を取りに行くことでリズムが生まれているのも確かです。開幕当初はディフェンス力の高い選手を重用していましたが、オフェンスに振り切ったことで勝率を上げただけに、この勢いのまま駆け抜けたいところです。
このまま行けばフォックスにとって初めてのオールスター出場も見えてきます。オールスターレベルの個人成績を残しながらも、チームを勝たせられない事がネックでしたが、現実的に手が届く位置になってきました。キングスファンはオールスターでフォックスとハリバートンの共演を待っています。