2試合ともにフィジカルでアグレッシブな守備でリズムをつかみ勝利に繋げる

バスケ男子日本代表は、ワールドカップ2023アジア地区予選のWindow5でカザフスタンと対戦した。第1クォーターはシュートタッチも良くなく互角となったが、第2クォーターに激しい守備から速攻へと繋げる得意の展開に持ち込み29-13のビッグクォーターを作り出し、前半で18点の大量リードを奪う。これで勢いに乗った日本は、第3クォーターの立ち上がりに攻守でカザフスタンを圧倒してさらに突き放すことで81-61と快勝している。

すでに試合の行方がほぼ決していた第4クォーターは、オフェンスのミスも目立って8-15と失速したが、全体として危なげない試合展開での勝利に指揮官のトム・ホーバスは次のように語っている。「勝利をつかむことができてハッピーです。第3クォーターまでのエナジーは好きですし、フィジカルで負けずアグレッシブなディフェンスができました」

これで日本は87-74で制したバーレーン戦と合わせ過酷なアウェーの連戦となったWindow5を連勝で終え、通算成績を5勝5敗としている。今回の連勝をもたらした大きな要因は、指揮官も言及しているように堅いディフェンスだ。中国、オーストラリア、イランといったバスケ強国と比べるとサイズ、フィジカルともにレベルが落ちる相手だったことは加味しないといけないが、ゴール下での激しい肉弾戦やプレーの強度が上回ったことで流れを引き寄せることができていた。また、バーレーン戦は後半に入り相手の外角シュートが爆発し猛追される苦境に陥ったが、そこで崩れることなくやるべき守備を遂行することで突き放すメンタル面のタフさも収穫だった。

個々の選手で言うと前から激しいプレッシャーをかけ続けることで相手のリズムを崩すなど、ディフェンスのギアを一段引き上げるトリガーとなり守備でゲームチェンジャーとなった河村勇輝の活躍は際立っていた。他にもルーク・エヴェンス、張本天傑、吉井裕鷹はゴール下で当たり負けしないコンタクトの強さが光っており、守備に定評のある須田侑太郎も堅実なマークを見せた。

テーブス海

コンボガードと新たな起用法に応えたテーブス海

オフェンス面で見ると、日本にとって比重が大きい3ポイントシュートは2試合続けて成功数が2桁に達するなど及第点だった。特に張本はバーレーン戦で9本中5本成功、カザフスタン戦で4本中2本と高確率で、さらに両試合で決めたチームを勢いづける4点プレーも見事だった。守備面も安定感しておりストレッチ4としての存在をより確固たるものとしている。

ただ、長距離砲よりも良かったのは若手選手たちによる積極的なドライブだ。カザフスタン戦の第2クォーターに突き放せたのも河村、テーブス海、吉井によるアタックで相手ディフェンスを攻略したことが大きかった。河村はバーレーン戦で18分33秒出場の20得点4アシスト、カザフスタン戦は22分25秒で13得点4アシストとベンチスタートから攻守に渡って大きなインパクトを与えた。今夏の代表戦ではドライブで抜いた後、パス偏重のプレーでシュートを打つようにホーバスに叱咤されたこともあった。しかし、今回は大黒柱として君臨する横浜ビー・コルセアーズの時と同じくチャンスがあればどんどんシュートを放っており、相手にとってより厄介な存在へとステップアップしている。

また、本職のポイントガードではなく、河村と一緒にプレーするコンボガードとしての出番が大半だったテーブスは、Window5で最も指揮官の評価を高めた選手だろう。河村と同じくテーブスも今回は自らシュートする積極性が光った。前回出場したWindow3のオーストラリアとチャイニーズ・タイペイ戦を見ると、チャイニーズ・タイペイ戦では9リバウンド7アシストを記録しているが、2試合合計でフィールドゴールの試投は6本に留まり2得点のみだった。それが「サイズがあってコンタクトに強い」とホーバスも評価する持ち味を生かしたドライブを見せて、オフェンスの貴重なアクセントになっていた。特にバーレーン戦ではフィールドゴールを9本中3本成功とアタックしても決め切れない場面が続いたが、それでも強気な姿勢を崩さずに攻め続けたことで第4クォーターの活躍に繋がった。

ホーバスは2人の併用による効果を「河村とテーブスの1番、2番はペイント内にたくさんアタックできてプレッシャーをかけることができます」と語る。抜群の切れ味を誇る河村、スピードに当たり負けしないパワーも備えたテーブスとタイプの違う2人のドライブで相手を消耗させたことは、ディフェンス面にも大きなプラス効果をもたらした。

全体的な選手起用を見ると、今夏から多くのプレータイムを与えられていた選手たちが今回も主力となっており、チームの骨格はより鮮明になっている。ただ、過去の歴史が証明するようにベストな12名で大会に挑めることは稀だ。それは女子代表の指揮官として、何度も想定外の事態に直面していたホーバスなら身に染みて分かっているはず。だからこそ、限られた時間の中でチーム戦術をより浸透させるだけでなく、戦力の底上げもリスクマネジメントとして欠かせない。その意味でもテーブスのステップアップは大きな価値があり、彼に続く新戦力が出現しメンバー争いが活性化することを願う。