開幕1勝3敗と出遅れも「強い相手と戦ったからこそ、課題が明確になりました」
Wリーグで前人未踏の11連覇を成し遂げるなど、ENEOSサンフワラーズは長らく絶対女王として君臨してきた。しかし、コロナ禍で途中打ち切りとなった2019-20シーズンを含めると、過去3年続けてチャンピオンの座から遠ざかっている。この間に黄金時代を支えた複数のトップ選手たちが引退や移籍でチームを去り、今のチームはこれまで出番の少なかった若手の出場機会が増え、世代交代の過渡期にある。
そんなENEOSは開幕から2節続けてトヨタ自動車アンテロープス、富士通レッドウェーブの優勝候補と対戦したこともあり、開幕1勝3敗と苦しいスタートとなってしまった。特に第2節の富士通戦は初戦で54-91と大敗し、2戦目は第1クォーターに23-8と先行したが、第2クォーター以降はオフェンスが停滞し第4クォーターに13-27と圧倒されることで59-63と痛恨の逆転負けを喫してしまった。
ENEOSの大黒柱である渡嘉敷来夢は、第2戦でフィールドゴール14本中10本成功の21得点10リバウンドのダブル・ダブルを達成と、見事なパフォーマンスを見せた。ただ、それでも勝利に届かなかった試合をこう振り返っている。
「第3クォーターまでは完全に勝ちペースでした。そこから守りに入ったわけではないですが、うまくいかなかったです。得点が入っていても自分たちの形ではなかった。ここ一番で得点が欲しい時に何をやったらいいのか、試合中に選手みんなが遂行できるようにしなければいけないと思います」
開幕直後とはいえ、黒星先行はENEOSにとって稀有なことだが渡嘉敷は「若いチームで、まだまだこれからですし焦りは正直ないです」と冷静にとらえている。そして、シーズン早々に強豪と戦えたことはチーム作りにおいてプラスになると考える。
「強い相手と続けて当たって良い経験ができました。言い方は悪いですが、強い相手ではないと何となくできてしまうところもあります。強い相手と戦ったからこそ、課題が明確になりました。あとはそこをどうしていくのか、これからいろいろと試行錯誤して良いチームを作っていけると思います」
要所でのミスなどで苦戦している若い選手たちについても「気持ちの強い選手がたくさんいて、能力的にも高い選手は多いです」と信頼が揺らぐことはない。「あとは本人たちの準備だけでなく、やることを明確にしてあげれば課題も見つかりやすくなります。『空いたら思い切り打って!』だけでは、課題も見つかりにくいです。強い相手に対して、ディフェンスがハードになってきた時にどうするのか。そういう部分について細かくやっていく必要があります」
「これでダメだったらそこまでだと思います」
「負けたからこそ得られるものがあると、ポジティブにとらえようとしています」と前を向くが、それでも生粋の負けず嫌いの渡嘉敷だけに悔しさが思わず口に出る。「でも今日は絶対に勝てました。絶対に勝てました。絶対に勝てました。もう3回、言っちゃいました」
それでも気持ちの切り替えはしっかりできており、チームの現状を正面から受け止めてステップアップのために行動を起こしている。「どんなに自分が悔しがっても負けは負けです。負けてしゅんとすることは誰でもできます。少しでもチームにとってこの負けが良い方向に変わればと思って試合後にスタッフとも話しました」
いろいろと課題はあるが、渡嘉敷は若い力が台頭してきている新しいENEOSの可能性を信じている。ただ、勝負師としての厳しい視線も当然のように持っている。「この2連敗で良い形に進んでいくんじゃないかと感じています。ただ、これでダメだったらそこまでだと思います。これで何も変わらなかったら、『何を変えたらいいのか』というところからもう1回、探さないといけないです」
ENEOSに加入してから勝ち続けてきた渡嘉敷にとって、今はこれまでにない苦境にいるかもしれない。だが、本人に悲壮感は全くない。「ここ3年、ケガをして去年も勝てなくてうまく行っていないわけではないですが、自分のバスケット人生の中で新しい経験という感じです。人として、選手としても成長できる機会なのでそこをうまくやっていきたいです」
渡嘉敷を中心としたENEOSは直面している壁を乗り越えられるか。そして、乗り越えた先にどんなチームへと進化しているかは、今シーズンのWリーグにおける大きな見所となる。