ベンドラメ礼生

文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

第1戦で見せたトランジション「良い武器になります」

サンロッカーズ渋谷の調子が上向いている。終盤までもつれる接戦となった、シーホース三河との連戦をモノにし、3連勝で東地区4位に浮上した。

これまでのSR渋谷は、敗れた10試合のうち実に9試合が10点差以内での敗戦で、勝負どころで踏ん張ることができない弱点を露呈していた。ベンドラメ礼生は、「追いつけるけど勝ち切れない試合が多かったので、やっと接戦をモノにできたなという気持ちがあって、うれしいです」と素直に喜びを表した。

三河との第1戦は、終始追いかける展開が続いての逆転勝利。逆に第2戦は主導権を握り続けながら終盤に追いつかれた。それでも、そこで崩れることなく勝ちきり、これまでの問題が解決されたような会心の勝利だった。

第1戦では15-0とトランジションで圧倒した。伊藤駿がプッシュし速攻の意識をチームに植え付けたことで逆転劇を呼び込んだ。ベンドラメは言う。「駿さんがプッシュしてくれたおかげで気持ちも強く保つことができたし、相手もそれでダメージを受けていたと思います。駿さんから『プッシュしてシュートまで行けるぞ』という声掛けがあったので、それで自信を持ってアタックできました」

ベンドラメ以外の選手も速攻を仕掛けることで、SR渋谷のトランジションの威力は増すことになる。彼自身がプッシュし速攻に持ち込むシーンはこれまでもあったが、「プッシュするのはすごくキツいですが、チームに勢いをもたらす意味でも大事なことです。周りの選手がプッシュしてアタックしてくれることで、次に自分が行ける。連続してああいうプレーが増えてくると思います。ありがたいというか、良い武器になります」

ベンドラメ礼生

「まだ僕らは負けの方が多い」と現実を見据える

ベンドラメは自身の成長を見据え、1番ポジション(ポイントガード)でのプレーを希望してきた。それでも、奇しくも3連勝という結果はベンドラメが2番でプレーしたほうがチームが機能することを示している。「僕が1番で出ている時にうまく試合運びができなかった、勝ち切れなかったことは責任を感じるし、2番で点数を取るとチームに勢いが出るのかなと感じます」とベンドラメも認める。

「自分の目指すところとチームが必要としてるところ、その中でやることが変わってくるとなると、自分の中でもちろん葛藤はあります」とベンドラメはその胸中を明かしたが、「常に1番でどうするべきかということは、2番で出ながらも考えてはいます」と、芯はブレていない。

どんなに良いパフォーマンスを見せようが、試合後は表情を変えず淡々とインタビューをこなすタイプのベンドラメ。今シーズン初の連勝を収めた第1戦の試合後も、「まだ僕らは負けの方が多いので」と表情を崩さなかった。

それでも「ここから強さが出てくると思います。良い方向に行ってるし、前向きにとらえているつもりです。雰囲気も良くなると思います」とチームの手ごたえを感じているようで、ようやく頬を緩めた。

いまだ借金5とスタートの出遅れが響いているが、SR渋谷は確実に浮上のきっかけをつかんだ。今後はベンドラメの笑顔も増えていくに違いない。

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