ケビン・デュラント

「ただコート上で結果が出なかっただけなんだ」

スティーブ・ナッシュはもうネッツのヘッドコーチではない。両者が道を違えたことを、ケビン・デュラントはブルズ戦が行われた11月1日の昼、試合前の仮眠から目覚めたタイミングで知った。ネッツではデュラントとカイリー・アービングが人事にも意見を出すと言われているが、この決定はあくまでフロント側で下され、選手には事後通告として伝えられた。

「こういうことが起きると毎回ショックを受ける」とデュラントは言う。「でもNBAでは普通のことで、夜の試合のために準備をした。特にシーズン中は常に練習だ試合だと物事がどんどん動いていて、あまり深く考えることはできない。ただ、常に意識の中にはある」

この夏、デュラントはナッシュとショーン・マークスGMに不満を抱き、ネッツを出て行こうとしていた。「健康なチームじゃなかったし、良いプレーもできていなかった。リーグを戦っていればしばしば起こるネガティブな出来事で、それは彼のバスケを否定するものじゃない。ただ上手くいかなかっただけなんだ」と彼は説明する。オフのゴタゴタを乗り越えて関係修復を果たし、再スタートを切ったが、その挑戦はわずか7試合で打ち切りとなった。

もともと2人はウォリアーズでともに仕事をし、信頼関係を築いていた。「スティーブと彼のスタッフと仕事をするのは好きだった。この数年はジェットコースターのように浮き沈みが激しいけど、その核となるバスケのスタイルは僕ら全員が気に入っていた」とデュラントは語る。

「選手はトレードを求め、コーチは解任され、ロッカールームでは意見が食い違う。NBAではそんなことばかり起こるけど、それでもみんな一緒になってプレーしてきた。ただコート上で結果が出なかっただけなんだ」

カイリー・アービングは反ユダヤ主義の映画を勧めるSNSの投稿をして、クラブと連名で謝罪の声明を発表した。ナッシュの後任とされるイメ・ユドカは今夏にセルティックスのヘッドコーチをスキャンダルで降りており、決定となればその是非が問われるのは免れない。ベン・シモンズは調子が上がらずここ2試合を欠場しており、ブルース・ブラウンの抜けたセカンドユニットは昨シーズンに比べて力が落ちている。渡邊雄太の健闘が光るが、裏を返せば本来活躍すべき選手が低調なプレーしか見せられていない現実がある。

そしてチームは2勝6敗と結果が出ていない。長いシーズンの序盤ではあるが、いまだ2勝以下のチームは6チームしかない。ネッツとナッシュは、このままでは先行きが暗いとして決別を選択したのだろうが、ショック療法が期待されたブルズ戦も目立つのは渡邊の活躍だけで、チームとしては力負けを喫している。

チームが窮地にある時に何か特別なプレーで引っ張るのがエースの仕事。中2日の休養を挟むこのタイミングでデュラントは気持ちを切り替え、チームを良い方向に導くことができるだろうか。