写真=Getty Images

周囲の雑音を締め出し、『やるべきこと』への集中を続ける

73勝9敗というNBA年間最多勝利記録を更新し、2年連続のシーズンMVP受賞、年間3ポイントシュート成功数(402本)の新記録達成など、昨シーズンのNBAで『主役』を演じたウォリアーズのステファン・カリーだが、唯一NBAファイナルで辛酸を舐めさせられた。

レブロン・ジェームズを擁するキャバリアーズを相手に第4戦までを終えて3勝1敗と王手をかけ、2連覇は間違いないと思われた中、主力ドレイモンド・グリーンが出場停止となった第5戦を機に流れが一変。キャブズに3連敗を喫し、大逆転優勝劇を目の前で見せられた。

失意のどん底を経験したウォリアーズだが、2014-15シーズン優勝に貢献したハリソン・バーンズとアンドリュー・ボーガットを『犠牲』にして、今夏No.1フリーエージェントであるケビン・デュラントを獲得。チームに改革をもたらして、タイトル奪還への強い意欲を示した。

カリーとデュラントのシーズンMVPデュオに加え、クレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーンという陣容が揃った新チームは『スーパーチーム』と形容され、今シーズンの優勝最有力チームとして注目されたのは当然のこと。

ウォリアーズファンは『スーパーチーム』の誕生に沸いたが、それ以外のチームのファンはウォリアーズを『敵役』として扱うようになった。それもこれも、戦力と注目度が高すぎる『反動』だ。

開幕前には、「年間82勝0敗が可能」など過剰な意見も見られたが、カリーは冷静にチームを取り巻く状況を見つめていた。『Wall Street Journal』とのロングインタビューの中で、カリーは今シーズンのチームについてこう語っている。

「僕たちに対する意見の数々は、あまりにもばかばかしいものだった。チームは負けることもあるし、苦しむこともある。冷静に、辛抱強く耐えないといけない時期は必ずあるものさ」

カリーの言う通り、ウォリアーズは今シーズンの開幕戦でスパーズに100-129で敗れたばかりか、その後も再建段階にある若手中心のレイカーズにも97-117と大敗した。

巷では、デュラントの加入でカリー、トンプソンのシュート機会が減少するという意見も聞かれるが、当人たちはチーム内での新たな役割について、公の場で異論や不満を発したことは一度もない。むしろカリーは、「ケビンがコートでしてくれることは素晴らしいものばかり」と、デュラントを称えている。

目的はあくまでもNBA優勝。そのための役割なら喜んで受け入れるという姿勢がチーム内に浸透しており、開幕から1カ月が経過した今、ウォリアーズは16勝2敗、リーグでダントツの1位となる勝率.889を維持している。

代理人の証言「まだまだ自分が成長できると考えている」

順当にプレーオフを勝ち進めば、3年連続してNBAファイナルでキャブズと対戦する可能性は高い。だが、現時点でメディアが注目しているのはそこではなく、今シーズン終了後のカリーの去就だ。

来夏フリーエージェントとなるカリーは、「ウォリアーズ以外のチームでプレーする姿を想像するのは難しい」とコメントしている。カリー自身は、新契約にサインするまで「何が起こるか分からない」と慎重に言葉を選んだが、本人の口から再契約を希望する発言があったことで、ベイエリアのファンは胸を撫で下ろしたことだろう。

今のカリーが見据えるのは、目の前の1試合にベストを尽くして結果を残すこと。周囲はキャブズへのリベンジをモチベーションにしていると考えるだろうが、長年カリーの代理人を務めるジェフ・オースティンは、『Wall Street Journal』に、「彼は、まだまだ成長できると考えている2年連続のシーズンMVP受賞者だ」と言う。

確かに選手としての進化は止まっていない。11月4日のレイカーズ戦で3ポイントシュート成功0本に終わり、3ポイントシュート成功の連続試合記録が157で途絶えた3日後、カリーはペリカンズ戦で1試合でのNBA新記録となる13本の3ポイントシュートを決め、新たな歴史を作った。

まだ28歳のカリーが今後どれだけのNBA記録を打ち立てるのかは別の話だが、彼のパフォーマンスを見ていると、ウォリアーズが『スーパーチーム』であるということを忘れさせられてしまう時もある。それだけ観衆が夢中になってしまう不思議な力を持った稀有な選手ということは間違いない。今後も進化を続けるカリーから、また目が離せなくなりそうだ。