ビクター・ウェンバンヤマ

所属クラブ会長「エムバペにできたんだから、ビクターにもできる」

ビクター・ウェンバニャマが所属するメトロポリタンズ92はこの秋、ラスベガスに招待されてエキシビジョンゲームを戦った。220cmの身長にウイングスパンは234cmを誇るウェンバニャマはここで衝撃的なパフォーマンスを見せ、一躍評価を高めた。昨年のU19ワールドカップでチェット・ホルムグレンやニコラ・ヨビッチとともに注目された一人だったが、いまやその評価は『レブロン以来の逸材』へとグレードアップした。

アメリカで大きな話題となったことで、フランス国内でもウェンバニャマ人気は過熱している。メトロポリタンズ92の試合は瞬時にチケットが売り切れて満員となり、アラン・ワイズ会長は「前代未聞の騒動だ」と語る。「ビクターと年齢の近い若者だけが彼を応援しているんじゃない。リオネル・ジョスパン(85歳の元フランス首相)が試合を見たいと連絡してきた。今は誰もがビクターに興味を持っている」

ウェンバニャマは昨シーズンにアスヴェルでフランスリーグ優勝を成し遂げると、今夏にメトロポリタンズ92へ移籍した。メトロポリタンズ92が来年のNBA挑戦をサポートしてくれること、そしてもう一つの理由はフランス代表を指揮するヴァンサン・コレットがメトロポリタンズ92のヘッドコーチも兼任していることだ。

フランス代表は11月のワールドカップ予選でリトアニア、ボスニア・ヘルツェゴビナと対戦する。すでにこの2試合に向けたメンバーは発表されており、ウェンバニャマは初めてA代表のメンバー入りを果たした。今回はルディ・ゴベアやエバン・フォーニエといったNBA組は招集されず、ユーロバスケットに参加したメンバーは2人のみ。18歳のウェンバニャマはこのチームでデビューするだけでなく、主役を務めるものと見られる。

18歳の彼に『国内組』とはいえA代表のエースを託すのは少々無茶かもしれないが、ワイズ会長は地元ラジオ局『France Info』に対し、「彼はそのつもりでいる。強い意志を持って代表チームに参加するんだ。エムバペにできたんだから、ビクターにもできる」と語っている。

キリアン・エムバペはサッカーのフランス代表選手で、2018年のワールドカップ優勝に大きく貢献した。この時のエムバペは19歳。ウェンバニャマがエムバペ級の逸材であれば、来年のワールドカップ、そして2024年のパリオリンピックで主役を演じられるはずだ。

それでも、今の注目度は上がりすぎており、バスケに集中できるか、プレッシャーに押し潰されてしまわないかが懸念される。ウェンバニャマ人気を煽るワイズ会長とは対照的に、指揮官コレットは冷静にこう語る。「彼が集中を保てるよう、チームと代表の全員がサポートする。ただ、この騒ぎが落ち着くことはもうないのだから、パリ・サンジェルマンでのエムバペがそうであるように、ビクターも慣れなければいけない」

「誰も見たことがないような選手になることが目標だ」と豪語するウェンバニャマは、NBAより先に代表チームで注目を集めることになる。フランス代表にとって最善のシナリオは、ウェンバニャマが国内組のエースとして経験を積み、来年のワールドカップを前にジョエル・エンビードが加わることだ。2019年のワールドカップでは3位、東京オリンピックとユーロバスケットでは準優勝。健闘で終わるのではなくタイトルを取るため、フランス代表は全力を尽くす。