ディフェンスでリズムをつかみ、主導権をキープする盤石の試合運び

Wリーグ2022-23シーズンの開幕戦が10月19日に行われ、3連覇を目指すトヨタ自動車アンテロープスが70-57でENEOSサンフラワーズに快勝した。トヨタ自動車は、今シーズンにアシスタントコーチから昇格した大神雄子ヘッドコーチが、「シーズンを通して、まずうちのチームはディフェンスからだということは公言できると思います」と語るチームの根幹である堅守をしっかり披露。ENEOSから計23ターンオーバーを誘発したように、試合の出だしから最後まで球際の強さを発揮する激しいディフェンスを継続してリズムをつかみ、終始セーフティリードを保ち続ける完勝だった。

ENEOSも後半に入り渡嘉敷来夢のインサイドアタック、後半から投入された林咲希の長距離砲で何度か流れを引き寄せる場面があった。しかし、この要所で得点を挙げ、相手に傾きかけた流れを断ち切る立役者となったのは山本麻衣だ。第4クォーター中盤、ENEOSが8連続得点でなんとか16点差まで追い上げたところから連続で3ポイントシュートを沈めて勝負を決めるなど、23得点3リバウンド3アシスト3スティールと攻守に渡って見事な活躍だった。

「トヨタのスタイルはディフェンスからです。みんながそれを意識してディフェンスから走ってリズムを作れたのは良かったと思います」

こう勝因を語る山本は、自身のプレーについては次のように振り返っている。「最初の方はシュートタッチが良くなかったですが、自分の仕事は1番、2番で川井(麻衣)さんと一緒に出ている時にシュートを迷わず打って、攻めることです。それを続けて後半の勝負どころで決められて良かったと思います」

「苦しい時にチームを助けられたらいいと思います」

トヨタ自動車からは今夏、日本代表として山本、馬瓜ステファニー、平下愛佳が女子ワールドカップ2022に出場した。代表活動を終えチームに戻ってきたのはシーズン開幕間近だったが、それでも大神ヘッドコーチは彼女たちにまず1週間弱の休養を与えた。自身も現役時代、長らく代表選手として活躍していた指揮官はその理由をこう語る。「代表選手にはとにかくバスケットから離れて欲しくて休みをあげました。日本代表の期間はずっと合宿だったので、そういうところは解き放してあげないといけない。いくら開幕まで2週間だったとしても、そこは人として大事かなと。一番に休んで欲しかったです」

山本はこのヘッドコーチの配慮によって、シーズン開幕に向けリフレッシュできたのは非常に大きかったと感謝する。「ワールドカップで正直メンタルも身体もやられていたので、1週間オフを与えてもらったことはリーグに良い形で入るためにもすごく自分には必要だと思っていました。大神ヘッドコーチが理解してくれて感謝しています。しっかり休んでチームに合流する時、勝つために自分ができることをやろうと切り替えて練習に臨みました」

今シーズン、山本は馬瓜、川井とともにキャプテンに任命され、よりチームを引っ張っていくことを求められている。「キャプテンとしてコートの中でリーダーシップを発揮していく。ゲームの流れを見て、チームとして戻る場所、自分たちならディフェンスのところで常に声をかけて意識してやっています」

リーダーとしての役割をこう考える彼女は、オフェンス面では次のことを重視している。「苦しい時にチームを助けられたら良いと思っていますが、自分が得点することにこだわりはないです。流れの中でシュートチャンスがあったら打ち、自分がボールに絡むことで良い流れができる時にそれを続けることを意識しています」

昨シーズン終了後、トヨタ自動車は三好南穂が引退、馬瓜エブリンが今シーズンの休養を発表し、長岡萌映子が移籍するなど複数の主力選手が抜けた。それでも山本と馬瓜を中心とした先発に加え、ベンチから平下とシラ・ソハナ・ファトー・ジャなど爆発力のある選手を投入できる布陣は、3連覇を狙える力を十分に備えていることを示した開幕戦となった。