ザック・バランスキー

文・写真=泉誠一

大差がついた原因は正反対なメンタリティ

11月7日に行われた秋田ノーザンハピネッツ戦、3連敗中の鬱憤を晴らすように、序盤から激しいディフェンスを仕掛ける。10分を終えた時点で28-8。一気に20点のリードを奪ったアルバルク東京の勢いはその後も衰えず、最多記録となる45点差、100-55で圧勝した。

秋田のジョゼップ・クラロス・カナルスヘッドコーチは、「A東京のような強い相手でも、戦う姿勢や努力を最低限しなければならないが、それが見当たらない選手が数名いた。自己中心的なプレーをする選手を許すつもりはない。今のチーム状況は非常に危険だ」と感情を抑えながらその怒りを吐露する。

「我々の良さはセルフィッシュな選手がいないこと」、「どんな試合展開になってもガベージタイム(点差がついて勝負が見えた試合の残り時間)はない」とA東京のシックスマン、ザック・バランスキーは自信を持って話す。秋田とは真逆のメンタリティだった。3連中のA東京だが、「落ち込むことはないですし、シーズンは長く、そういう時もあります。もちろん絶対に負けられないと気持を切り替えて臨んだ結果、100点ゲームができました。ここから波に乗って行ければ良いなと思います」と付け入る隙を与えなかった。

第3クォーターは2度の24秒バイオレーションに追い込むディフェンスで、第4クォーターはいきなり3ポイントシュートを沈め、バランスキーはコートに入った瞬間から100%の働きを見せていた。「ベンチから出て活躍した方が相手にダメージを与えられる」という強い気持ちと、フレッシュな運動量で相手をねじ伏せていく。

「今シーズンは水曜ゲームが多いために、練習時間があまり取れていません。逆に、試合が一番の練習になるという意識で戦っていますし、無駄にできる時間帯もありません」ということが、「ガベージタイムはない」ことに繋がる。練習中、少しでも上手くいかなければストップし、事細かく動き方を身体に染み込ませるのがルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチのスタイルだ。ハードワークで有名なA東京だが、「僕らの練習はゲーム形式の5on5をいっぱいやるわけではないです」。試合になり、ようやく流れの中でバスケができるからこそ、「みんなが楽しんでやっていますし、どんな展開になってもしっかり戦えています」というバランスキーは確かに楽しそうだ。

ザック・バランスキー

常に前を向き、ポジティブな空気をチームに注入

パヴィチェヴィッチヘッドコーチは常々、「タフなスケジュールだ」とぼやいているが、バランスキーの考えは違う。「確かに開幕前のチャンピオンズカップでは6日で5試合を戦い、疲れは溜まっていたとは思います。でも、大会はそこで終わっていたし、誰一人それを言い訳にすることなく、チームの雰囲気は全然悪くない」というのが今のチーム状況だ。3連敗して落ち込む選手がいれば、同じポジションの菊地祥平とともにちょっかいを出して笑顔を作る。「次の試合はすぐにやってくるので気持を切り替え、先だけを見ています。今日の試合ももう終わりましたので、明日からは川崎戦へ向けて準備していきます」」と常にポジティブな空気を注入している。

今シーズンはベンチスタートが続くバランスキーだが、「スタメンになりたいとは、正直言えば考えていない」。それよりも、「第4クォーターの接戦の中で試合に出られる選手になりたい気持ちの方が強い」と話す。逆転フローターを決めた10月24日のサンロッカーズ渋谷戦もさることながら、秋田戦のような圧倒した時も集中させるために投入し、その役割に徹することでチームからの信頼を勝ち獲った。

これまでのバランスキーの言葉を裏付けるように、秋田の指揮官はA東京の勝利をこう称えている。「40点差がついても、最後の1秒まで常に戦う気持ちを出して向かってきた素晴らしいチームだ。A東京の誇りを持って戦おうという気持ちが、しっかり現れていた。今日のような大差がつくと手を抜いて、最後まで努力しないチームの方が多い。だが、それらとは違い最後まで戦う気持ちを出し続けたA東京の勝利を称えたいし、素晴らしいメンタリティだ」

圧勝した裏側をテーマにしたが、この日の水曜ゲームは表側も賑わいを見せていた。この日23歳となった馬場雄大は、バースデーダンク3本の祝砲を叩き込んだ。齋藤拓実は21分出場で17点7アシストなど軒並みキャリアハイを更新する。古巣、そしてカナダ時代の恩師との戦いとなった安藤誓哉は、気合い十分に序盤から飛ばし、成長した姿を見せつけた。さらに、『走れ!T校バスケット部』に出演する早見あかりさんらが勝利に花を添えてくれた。

次戦はアウェーで川崎ブレイブサンダースと対戦。前回の対戦は2連勝できたが、パヴィチェヴィッチヘッドコーチはプレータイムを伸ばし、復調してきたニック・ファジーカスを警戒し、「厳しい試合になる」と気を引き締める。さらに、翌週は琉球ゴールデンキングス戦、ホームに戻ってくる2週間後の11月23日、24日には京都ハンナリーズ戦と、黒星を喫した両チームへのリベンジに燃える戦いが続く。

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