ヒート

ビッグマン不足の中、個々のスピードとシュート力に勝機を見出す

昨シーズンの東カンファレンス1位だったヒートでしたが、ファイナルまでたどり着くことはできず、悔しい終わり方となりました。ハードワークを基盤とし、各選手の個性を組み合わせた戦術に加え、平均20.7得点を奪ったタイラー・ヒーローがシックスマン賞に輝くなど、層の厚い布陣で優勝のみを見据えていただけに、失意に満ちた受け入れがたい結果でした。

当然、さらなるバージョンアップを目指す今オフでしたが、ビクター・オラディポやケイレブ・マーティンの残留に成功した一方で、PJ・タッカーとマーキーフ・モリスが移籍し、パワーフォワードのポジションだけ大きな穴が空きました。ケビン・デュラントのトレードに手を挙げた時期もあったため、フリーエージェント市場でタイミングを逸してしまったのか、明確な穴埋めをすることなくトレーニングキャンプに入ってしまいました。フィジカルの強いガードが多く、ある程度はカバーできるものの、ビッグマン不足のロスターになっています。

サラリーキャップが苦しい中、ヒーローとの大型契約も決めたため、トレードを成立させるのも難しくなってきました。ドラフトではシュート力の高いウイングのニコラ・ヨビッチを指名しており、昨シーズンリーグトップの成功率を誇った3ポイントシュートを活用した戦い方に磨きをかける方向性です。

ラプターズのビッグラインナップやヤニス・アデトクンボ、ジョエル・エンビードなどのビッグマンへの対応をどのようにこなしていくのかがポイントで、バム・アデバヨの働きは重要です。また、やや偏ったロスターは正面衝突ではデメリットとなる一方で、スピードとシュート力の勝負に持ち込めば大きなメリットが生まれます。よってこれまで以上に自分たちの戦い方へと巻き込む必要があり、カイル・ラウリーのゲームメークの重要性が高まります。ジミー・バトラーとヒーローを中心としたオフェンスも含めて、各選手が従来以上に自らの役割を高いレベルでこなさなければいけません。

ネガティブな印象が強いオフになってしまいましたが、エリック・スポールストラに率いられ、独自のカルチャーが浸透した今のヒートが勝率5割を下回る姿は想像できません。ゲイブ・ビンセントやマックス・ストゥースなど、プレータイムが限られていた選手もしっかりと育てあげスターターと変わらない貢献度でチームを盛り立ててくれ、誰がコートに立っても攻守においてハードにプレーし、隙のない戦い方で確実に勝利をもぎ取っていきます。

優勝だけが唯一の目標であるならば、やや物足りないと感じるオフでしたが、それゆえに分かりやすくもなりました。突き詰められた戦い方でさらに進化するのか、それともラストピースを求めてトレードに動くのか、まずは様子を見るシーズン開幕になりそうです。